売れまくる「ハリアー」発売から1年後の通信簿 「高い商品力」+「店舗数4倍」で販売に死角ナシ

拡大
縮小

第2の理由は、ハリアーを取り巻く状況の変化だ。まず、SUVというジャンル自体が、初代や2代目の時代とは比べものにならないほどメジャーになった。

1990年代後半は、まだまだセダンやハッチバック車が定番で、ようやくミニバンが増え始めた時代だ。SUVが販売ランキング上位に顔を出すことなんて、考えもできなかった。

ところが、現在はハリアーだけでなく、トヨタ「ライズ」や「RAV4」、ホンダ「ヴェゼル」などのヒット車がランキング上位に顔を出すようになった。SUVが当たり前の時代になっているのだ。

今年モデルチェンジしたヴェゼルは、納期が最大1年となるほど人気だ(写真:本田技研工業)

さらに昨年は、ハリアーへの特別な追い風もあった。トヨタの“全車種併売化“だ。これまでトヨタは、販売会社を「トヨタ店」「トヨペット店」「カローラ店」「ネッツ店」の4系列に分けていた。そして、販売系列ごとに売る車種も違った。

もちろん、「プリウス」のように全販売店で扱う車種もあったが、「クラウン」はトヨペット店、「ヴォクシー」はネッツ店といった具合に、基本は系列ごとに専売モデルを取り扱っていた。

「売れる理由」が詰まっている

それが4代目ハリアーの発売直前となる2020年5月から「すべての販売店で、すべての車種を取り扱う」となったのだ。ハリアーはトヨペット店だけの取り扱いだったから、販売力は単純換算で4倍である。

しかも、トヨタが2020年に売り出した新型SUVは、ハリアーと「ヤリスクロス」だけである。SUVは今や人気ジャンルであるから、どの販売店であっても新型モデルを売りたいと思うのは、当然のこと。しかも、それが人気車種であるハリアーだ。この体制で、売れないはずはない。

正直、RAV4よりも断然売れている現状は、「少々、売れすぎではないか」と思う部分もあるが、やはりタイミングというのは大事なのだ。

また、RAV4とハリアーの価格は意外に小さく、「価格が近いならば」と高級感のあるハリアーを選ぶ人がいることも予測される。「C-HR」からの上級移行もあるだろう。

やはり、“手が届く価格”でありながら“ちょっとした高級感が味わえる”というハリアーのコンセプトが、自動車ユーザーのニーズとマッチしたのだろう。

まだまだSUVがマニアックな存在であった1997年に、その後四半世紀以上も続き、しかも世界中で流行する「高級SUV」というコンセプトを考え、実行したトヨタに脱帽するしかない。

鈴木 ケンイチ モータージャーナリスト 

著者をフォローすると、最新記事をメールでお知らせします。右上のボタンからフォローください。

すずき けんいち / Kenichi Suzuki

1966年生まれ。茨城県出身。國學院大学経済学部卒業後、雑誌編集者を経て独立。レース経験あり。年間3~4回の海外モーターショー取材を実施。日本自動車ジャーナリスト協会(AJAJ)会員。

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
自動車最前線の人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT