「SLの王者」D51形、日本全国を駆け巡った名場面 地域ごとに個性豊かな国民的機関車「デゴイチ」

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D51形は大量に造られたため、製造年度によってさまざまな形状の違いが見られた。筆者も含め、昭和のSLファンたちはさまざまな個性あるD51を追って全国を撮影して回る人も多かった。

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一見して形状の違いがわかるのは、初期に製造された95両だ。これらはボイラー上の煙突と砂箱(車輪の空転を防ぐために撒く砂を入れる場所)の間に給水温め器(ボイラー内に供給する水を排気熱で温める装置)を設置して半流線形のカバーで覆っており、独特の形状から「ナメクジ」と呼ばれ、その貴重さからファン垂涎の機関車だった。現在、このタイプは京都鉄道博物館で1号機、碓氷峠鉄道文化むら(群馬県)に96号機が保存されている。

超レアだった「スーパーナメクジ」

このタイプの中でも、とくに汽車製造会社製の22・23号機はドームが運転台まで連続して延びていたところから「全流線形」形と呼ばれ、SLファンの間からは「スーパーナメクジ」と呼ばれていた。

絵葉書に残る「スーパーナメクジ」の姿(所蔵:大塚康生)

残念ながら目撃した者は少なく、筆者も実物は見ていない。当時の写真と絵葉書からその形態を偲ぶばかりだ。

ただ、ナメクジ型は重量配分の問題で発車の際に空転が多発するなど使いにくさがあったといい、給水温め器を煙突の前に搭載して半流線形カバーをやめた改良タイプが試作され、こちらが標準型となった。現在動態保存されているJR東日本の498号機、JR西日本の200号機、圧縮空気で動く「えちごトキめき鉄道」の827号などは標準型と呼ばれるタイプである。

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