「SLの王者」D51形、日本全国を駆け巡った名場面

地域ごとに個性豊かな国民的機関車「デゴイチ」

ここまで登場の経緯や形態の違いなどD51形の特徴を紹介してきたが、ここからは筆者が昭和40年代に全国のSLを追い続けた際に焼き付いたD51形の力闘区間、そして美しい風景を主な路線ごとに紹介してみたい。

北海道の石北本線で「常紋越え」といわれる峠越え区間は、SLが引退しディーゼル化されてもなお鉄道ファンに撮影名所として知られているが、筆者がSL撮影に訪れた昭和40年代はD51形が重連や後補機付きの貨物列車で力闘していた。人里離れた地ながら、当時の常紋信号所には職員が常駐して、訪れるSLファンを快く迎えてくれたものだ。

石北本線常紋信号場でスイッチバックするD51形牽引の貨物列車(撮影:南正時)

北海道のSLといえば、函館本線の山線ではC62形の重連が知られていたが、D51形の走りもなかなか豪快で、貨物列車や客車を牽いて峠越えに活躍していた。映画『男はつらいよ・望郷篇』(1970年)では山田洋次監督自らナメクジ形D51の運転台に添乗して小樽―小沢間でロケを行ったことは、当時を知るSLファン、寅さんファンの語り草になっている。

海岸、山、桜…日本の風景を駆けた

日本海沿岸を走るD51形も忘れがたい情景で、羽越本線、奥羽本線を走る姿を日本海をバックに撮影したものだ。これらの路線ではD51形は貨物列車を牽引し、旅客列車はC57形、奥羽本線ではC61形が牽引していた。奥羽本線の陣場―津軽湯の沢間ではD51形三重連が貨物列車を牽く迫力の姿も見られた。

山間部を走る姿も印象に残っている。長工式集煙装置と重油併燃装置(石炭とともに重油を燃焼させる装置)を搭載した「重装備」のD51形は中央西線の塩尻―中津川間で見られ、山深い木曽谷を時には重連で豪快に走っていた。関西本線では鈴鹿山地を越える「加太越え」が有名で、ここでも重装備のD51形が重連で鈴鹿を越えていた。関西本線をさらに西へ進み、笠置駅付近で撮影した渓谷沿いに咲く桜とD51形のショットも忘れがたい。

夕陽に照らされた山陰本線のコンクリート橋を行くD51形牽引の列車(撮影:南正時)

山陰本線では米子―下関間に最後までD51形とC57形が残っていた。私の好きな撮影地は折居、三保三隅付近の海岸線と、宇田郷に架かるコンクリート橋だ。夕日にSLのシルエットが映えた。

現在、筆者は当時撮影し、劣化と退色が始まったカラーフィルムのデジタル化に励んでいる。近いうちに、これらの蒸気機関車の写真展を開催して原画をお見せできる日も近いことであろう。

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