東京五輪、「無観客開催」決定でも遠い安全と安心 衆院選勝利と続投狙う菅義偉首相の前途に暗雲
8日に官邸で記者会見した菅首相は、「東京の感染拡大は全国に広がりうる。夏休みやお盆の中で多くの人が地方に移動することが予想される。ここで再度、東京を起点とする感染拡大は絶対に避けなければならない」と厳しい表情で説明した。
また、東京での前回宣言解除からわずか3週間での再宣言については、「変異株などで想定以上に感染が拡大した」と予想の甘さを認め、国民に対して「大変申し訳ない思いだ」と頭を下げた。
政府は当初、五輪開催都市の東京はまん延防止等重点措置を継続する方針だった。しかし、分科会の感染症専門家が宣言発令を強く主張し、7日に新規感染者数が一気に900人を超えたことで、緊急事態宣言の発令に追い込まれた。
官邸の危機管理は大失敗だった
ただ、6月21日の宣言解除の時点で東京での感染再拡大が始まっており、今週に入っての急拡大も感染症専門家の予測通りだった。菅首相サイドから「想定外の感染拡大」(政府筋)との声が出たことについては、与党内でも「最悪の事態を想定していなかった証拠で、危機管理としては大失敗」(閣僚経験者)との批判が相次ぐ。
緊急事態宣言下での五輪開催となったことについて、菅首相は「五輪は世界の40億人が視聴する。世界中の人々の心を1つにする力がある。新型コロナという大きな困難に直面する今だからこそ、世界が1つになれることを、全人類の努力と英知によって難局を乗り越えていけることを東京から発信したい」と力説した。
注目の観客の有無については「私はこれまで緊急事態宣言となれば無観客も辞さないと申し上げてきた」と述べただけで明確な意思表明は避けた。政府や東京都、大会組織委員会など5者協議に取り扱いを委ねる姿勢を繰り返した。
その一方で、菅首相は「感染対策の決め手となるのがワクチンだ。諸外国の例を見ても、全人口の約4割に1回接種したあたりから、感染者は減少傾向になっている」と力説。宣言期間を五輪開催後の8月22日としたことについても、「ワクチンの効果がさらに明らかとなり、病床の状況などに改善がみられる場合には前倒しで解除する」と事態改善への強い意欲と期待を示した。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら