不登校の僕を救った母の「好きにしなさい」の一言 俳優・ゆうたろうさんが振り返って語る

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当日は緊張したんですけど、姉にメイクをしてもらって衣装に身を包み、舞台に上がりました。すると、僕のことをまったく知らない人たちも注目してくれたんです。ショーが終わってからも「写真を撮ってもらえますか」と何人か声をかけてくれました。

やっと見つけた、僕の居場所

そのとき、初めて自分の居場所を見つけられた気がしたんです。今まで僕はずっと自分がきらいで、マスクや帽子で顔を隠して行動していました。でも本当の気持ちは、存在したかった。生き続けていたかったんです。誰かが僕を認めてくれれば、僕は生き続けることができる。だから、ずっと自分の居場所を探し続けてきました。そして見つけたのが、舞台に上がることでした。それが僕の生きる場所であり、居場所だったんです。「この世界で生きたい」と、初めて思えた瞬間でした。それが今の僕の原点です。

思い返すと僕の半生は、僕自身がみずから進んで行動したというよりは、まわりがくれたきっかけによって人生が大きく動いたのだと思います。僕はもらったきっかけにYESと答えて、行動し続けただけなんですね。だからまわりの人にすごく感謝しています。

――ご自身の不登校経験を、今どう考えていますか。

10代のころの僕は、不登校をしていた2年半を、空っぽでムダな時間だと思っていました。当時は僕という存在の何もかもがイヤで、すべてを消し去りたい気持ちでいっぱいだったんです。だから大きらいな自分を殺すように、過去のことはすべて捨て去って、生まれ変わったつもりで生きてきました。

でも、こうしてふり返ってみると、あのときの2年半の経験が、現在に活きているのかなと思います。自分を見つめなおす時間があったからこそ、高校には進学せず今の道を選んだり、ファッションの仕事をしたり、自分の生き場所を見つけることができました。不登校で苦しんだ自分、殻を破ろうとした自分、そして芸能活動をする自分。第1章、第2章という感じで、人生って全部つながっているんだな、と。だから不登校の空っぽな2年半の時間も、まあ大切だったのかなと思います。

――ありがとうございました。

(聞き手・石井志昂 編集・木原ゆい 写真・山根悠太郎)

【プロフィール】ゆうたろう
1998年、広島県生まれ。アパレル店員時代に「かわいすぎる美少年モデル」として注目を集め、芸能活動を開始。2017年からドラマ・舞台で精力的に俳優活動を行ない、数々の話題作に出演。出演映画の「サマーフィルムにのって」は、2021年8月6日(金)より新宿武蔵野館ほか全国ロードショー。

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日本で唯一の不登校専門紙です。不登校新聞の特徴は、不登校・ひきこもり本人の声が充実していることです。これまで1000人以上の、不登校・ひきこもりの当事者・経験者が登場しました。

また、不登校、いじめ、ひきこもりに関するニュース、学校外の居場所情報、相談先となる親の会情報、識者・文化人のインタビューなども掲載されています。紙面はすべて「親はどう支えればいいの?」という疑問点から出発していると言えます。

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