あの人はなぜいつも楽観的なのか? 起業家を増やすための「楽観脳磨き」のススメ

拡大
縮小

環境をどのようにとらえるかは、遺伝子と幼少のころの環境によって規定されており、それは容易にして変わることはない。「楽観脳」は神経構造の中でとくに、報酬や気持ちのいいことに反応する快楽の領域にある。この楽観脳が強いタイプの人は、リスクに果敢に挑戦することも楽しく感じる。その一方で「悲観脳」は脳の古い構造部の中、とくに危険や脅威を警戒する恐怖の領域に存在している。こちらの悲観脳が強いタイプの人は、ほんの些細なことにも恐怖を感じて尻込みをっしてしまう。

セロトニンが楽観脳と悲観脳を規定

オックスフォード大学のエレーヌ・フォックス教授

では楽観脳と悲観脳の強さはどのようにして決まるのか。フォックス教授を一躍有名にしたのは、2009年に発見した「セロトニン」という遺伝子だ。当初、教授は、このセロトニン遺伝子を多く持っている人が物事を前向きにとらえることのできる「楽観脳」をつくっている、という研究結果を発表する。しかし、このセロトニン遺伝子は、楽観脳にも悲観脳にも変わりうる遺伝子だった。何が、それを規定するかといえば、幼少期の環境だ。

たとえば、教授の研究によれば、マイケル・J・フォックスが「前向き」の性格であるのは、幼少期につねに祖母が肯定的にマイケルのことをとらえていたから、このセロトニン遺伝子が「楽観脳」の遺伝子に変わったのだという。

もちろん、大人になってからも変化しうる。本書には、楽観脳を磨くためのテクニックも紹介されている。冒頭の「起業」の話に戻すと、「心の姿勢」こそが起業家になるためのポイントでもあるのだ。起業家を増やそうと躍起になっている政府関係者、ベンチャーキャピタル関係者は、ヘタに起業に関しての専門書を読むより、この本を参考にしたほうがいいかもしれない。
 

東洋経済オンライン編集部

ベテランから若手まで個性的な部員がそろう編集部。編集作業が中心だが、もちろん取材もこなします(画像はイメージです)

この著者の記事一覧はこちら
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事
トレンドライブラリーAD
連載一覧
連載一覧はこちら
人気の動画
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】新興国化する日本、プロの「新NISA」観
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
【田内学×後藤達也】激論!日本を底上げする「金融教育」とは
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
TSUTAYAも大量閉店、CCCに起きている地殻変動
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
【田内学×後藤達也】株高の今「怪しい経済情報」ここに注意
アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
  • シェア
会員記事アクセスランキング
  • 1時間
  • 24時間
  • 週間
  • 月間
トレンドウォッチAD
東洋経済education×ICT