今のうちに行っておきたい新橋「シブいビル」2選 「ニュー新橋ビル」と「新橋駅前ビル」の来歴

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一方で、汐留口側の新橋駅前ビルに関しては2017年に新橋駅東口地区再開発協議会が設立され、大成建設とコンサルタント会社アール・アイ・エーが協議会の活動を支援。さらに昨年10月三井不動産が事業協力者となっている。

新橋駅前ビルは、ニュー新橋ビルより5年早く1966年に竣工。当時最新の輸入建材だったプロフィリットガラスを用いた個性的な外壁デザイン。L字型と三角形を組み合わせた不思議な形の1号館と、都道を挟んで、より小型の2号館の2つの建物で構成されている。今はその背後に汐留の超高層ビル群が聳え、その対比がかえってこのビルのレトロ感と存在感を際立たせている。

背後には汐留の超高層ビル群、隣には“ゆりかもめ”新橋駅ができるなど、周辺の環境は激変してきた(写真:筆者撮影)

かつての街並みを再現した地下街

ビル内に入ると、こちらでもいきなり昭和の時代にワープ。特に地下一階の飲食店街は、戦後闇市跡の飲み屋街からの連続性が感じられるものだ。通路沿いの縦格子は、以前この地にあった飲み屋街「狸小路」の雰囲気を再現したデザインということ。

メイン通路の両側には迷路のように細い路地のような通路が張り巡らされ、その両側や奥には小さなスナックやバー、小料理屋がひしめいている。このビルができた当時、汐留にはまだ貨物駅が、築地には魚市場があり、夜勤明けや早朝に一仕事終えた人が朝から飲める店もあったという。

新橋駅前ビル1階入口前には、かつてこの地にあった狸小路にちなんだ開運狸の像がある(写真:筆者撮影)

虎ノ門ヒルズや渋谷パルコなど最新の商業ビルでは、館内にこの手の横丁的な飲食店街をつくるのが流行っているようだが、新橋駅前ビルはその先駆けモデルだったと言えよう。

新橋駅前ビルの再開発協議会には、2021年1月時点で約7割の関係権利者地権者が加入しているという。再開発が具体的に動き出してビルがなくなるのは何年後になるのだろう。
保存することも再現することも不可能であるがゆえ、失われゆくこの二つのビルには、一層の哀惜と愛着を感じる。  

鈴木 伸子 文筆家

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すずき のぶこ / Nobuko Suzuki

1964年生まれ。東京女子大学卒業後、都市出版『東京人』編集室に勤務。1997年より副編集長。2010年退社。現在は都市、建築、鉄道、町歩き、食べ歩きをテーマに執筆・編集活動を行う。著書に『中央線をゆく、大人の町歩き: 鉄道、地形、歴史、食』『地下鉄で「昭和」の街をゆく 大人の東京散歩』(ともに河出書房新社)『シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトル・モア)などがある。

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