「外国人との食事ダメ」騒動で語られていない問題 「外国人=脅威」というラベル付けの真の危険性

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約2カ月後には東京オリンピックで多くの外国人を迎えるとしている日本における根深い問題とは(写真:PIXTA)

5月19日と20日、茨城県の潮来保健所は非常に不快で不適切な内容の新型コロナウイルス感染予防アドバイスを含む文書を発信した。鉾田市とJAあての文書には「外国人と一緒に食事をしないように」といった記載があった。

この文書は同市の外国人が働く農家への呼びかけを目的としたもので、「外国人から感染した可能性が疑われる新型コロナウイルス患者が多く発生している」としたうえで、「外国人と会話するときは必ずマスクをつける」ことを勧めた。

当然のことながら、文書が発信された後、これを「不適切」とする激しい抗議が湧き起こった。この内容に対してはもっともな反応だろう。その後まもなく、保健所と茨城県感染症対策課は文書を撤回し、「誤解を招く言葉遣い」について謝罪し、「外国人を差別する意図はまったくなかった」と主張した。

世界でアジア人差別が起きている時に

日本は約2カ月後に東京オリンピック・パラリンピックを開催する予定で、多くの外国人アスリートとオリンピックスタッフが訪れることを考えると、今回の事は大きな問題と言える。

現在、世界中でアジア人が差別の対象となり、殺されたりしている。それは、この文書を考えたり、発信したり人々と同じような考えを持つ人種差別主義者によって作り上げられた新型コロナとアジア人の関係性の間違った認識が広まっているためだ。これがきっかけとなり、世界では今、#StopAsianHateの運動が起こっており、私も含めたさまざまな背景を持つ多くの非アジア人がこれを支援している。

だというのに、今回日本ではこれと「逆」のことが起きてしまったのである。

ここ数カ月、全国で新型コロナの感染が拡大しており、茨城でもクラスター発生の報告があったので、警戒が高まっていること自体はそれほど驚くべきことではない。実際、クラスター発生にはベトナム人移民が関係していたので、それが、警告が外国人に向けられた理由について説明するものになるかもしれない。

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