数億円の「特注ロールスロイス」が注目される訳 ボートテイル発表に見る究極の富裕層ビジネス

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昨年発表されたベントレー 「マリナー・バカラル」は、約150万ポンド(約2億1450万円)という価格にもかかわらず、限定12台が即完売。

フェラーリ・ワンオフ・プログラムでは、エリック・クラプトンが往年の「512BB」をオマージュした「SP12EC」をオーダーしたことや、このプログラムの第1号車である「SP1」が、世界屈指の日本人フェラーリコレクターのオーダーによるものであることが知られている。

このように、並の高級感では満足できない顧客のためにワンオフモデルを作ることが、近年の富裕層ビジネスの主流となっており、ロールス・ロイスはその流れを牽引してきた。今回、発表した「ボート・テイル」は、オーナーの持つ並外れた理想を形作る集大成といえる1台で、同社の未来を示唆するモデルとしても注目されている。

「ボート・テイル」驚きのコンセプト

世界的な成功者であるロールス・ロイスの顧客たちは、まさに“目利き”であり、多くのラグジュアリーなコレクションを持っている。当然、彼らの欲求を満たすことは難しい。今回のボート・テイルは「このクルマはおもてなしの舞台となり、それにふさわしいものを提供しなくてはならない」 というのが、依頼者の要望だったという。

ロールス・ロイスCEOのトルステン・ミュラー・エトヴェシュ氏は、同モデルの発表について次のように述べている。

「ボート・テイルは、共同作業、野心、努力、そして時間の集大成です。このクルマは、成功を祝福する永続的な遺産を作りたいという願いから生まれました。ロールス・ロイス ボート・テイルは、その驚くべき実現性によって、当ブランドの歴史と現代のラグジュアリー界を見渡した中で、極めて重要な瞬間を刻んでいます」

こうして生まれたボート・テイルのリヤデッキには、これまでの自動車の世界には存在しない驚くべきコンセプトが、搭載されている。ボタンを押すと、デッキは蝶の羽のように大きく開き、ホスティング・スイートが出現するのだ。

「ホスティング・スイート」を展開するとカラトリーが現れる(写真:Rolls-Royce Motor Cars)

その凝った動きは、著名な建築家であるサンティアゴ・カラトラバ氏が追求した、カンチレバーコンセプトに着想を得たものとなっていると説明されている。

さらに、このホスティング・スイートには、ロールス・ロイスのアルフレスコ・ダイニングを体験するための備品を用意。片側には食前酒用、もう片側には「Boat Tail」と刻印されたパリのクリストフル社製カトラリーが収められている。

また、同モデルのために開発された専用の冷蔵庫には、顧客お気に入りのヴィンテージシャンパン「アルマン・ド・ブリニャック(Armand de Brignac)」が収められており、その周囲はボトルの色に合わせて丹念に磨き上げられるこだわりようだ。

次ページオーナーは1932年製ボート・テイルも所有
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