新幹線運転士が大歓迎、JR西「サングラス」の効果 在来線に続き全エリアで導入、他社に広がるか

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季節にもよるが、大阪の区所に所属する運転士は、泊まり勤務の早朝に博多を出発する上り列車が広島駅に到着するときに朝日がまぶしく感じるという。新幹線運転士の小野耕平さんは「広島駅ではのぞみ号・ひかり号の16両編成の場合、停止位置はホームの屋根が途切れていて日差しが当たる。サングラスがあると停止目標にきれいに合わせやすい」と話す。

サングラスを着用しても色の識別に影響がないという(写真:JR西日本)

また、下り列車(博多方面)の場合は西明石に16両編成で停車する際、夕日が視界を妨げる場合がある。秋の夕方の下り列車はずっと西日に向かって走行することになり、運転士の疲労の原因になりやすかった。

従来は、運転席のサンバイザーを活用するほか、日が差す時間帯に停車する際はあらかじめ早めに走って速度を落とす時間を長めに確保したり、目を細めたりしてそれぞれ対策をしていたそうだ。

山崎課長は「まぶしくて目標物が確認できないときは速度を落としなさいと指導している」と話す。こうした場面でサングラスがあれば列車の遅れにつながる心配の種が減らせることになる。

出番は朝夕だけでない

日中も、トンネルから抜け出るときや、ホーム上の安全や線路の飛来物をチェックするときなど、サングラスの出番が多い。それぞれの運転士が次の駅に定時で到着するため駅間に目印を持っているが、そうした目標物を確認するのにも役立つ。小野さんは「運転台に置いて、いつでもかけられるようにしている」といい、運転士の間で早くも必需品として重宝されていることがうかがえる。

加えて、北陸新幹線では冬の晴天時にありがちな雪の照り返し対策にもサングラスが効果を発揮しそうだ。

岡山駅では停止目標付近の窓に朝日のまぶしさを防ぐ対策を施した(写真:JR西日本)
広島の運転士区所が作成した「太陽光等によるリスクマップ」(記者撮影)

これまでも太陽光の問題は、新幹線の運転士から重大なリスクの要因として認識が共有されていた。岡山駅のホームでは停止目標に太陽光線が重ならないように窓にフィルムを貼る工夫がなされている。金本所長は「私が本社勤務だったときに広島の区所の運転士から要望があって取り付けた」と説明する。

また、広島の運転士区所では「太陽光等によるリスクマップ」を作成。たとえば、小倉駅については「春頃(朝日)ホーム全体が見えづらい」「秋頃(西日)8両停目注意!」などと、新大阪―博多間の各駅での運転時の注意点を挙げている。

JR西日本では今回、在来線・新幹線のすべての運転士が貸与されたサングラスを着用して乗務できるようになった。だが、ほかの鉄道会社に目を向ければ「利用者に威圧感を与える」といった懸念やコスト面の理由から導入に及び腰の印象だ。運転士のサングラス着用について、ファッションの問題でなく、安全面での有効性が認識されるようになるには、まだまだ時間がかかりそうだ。

橋村 季真 東洋経済 記者

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はしむら きしん / Kishin Hashimura

三重県生まれ。大阪大学文学部卒。経済紙のデジタル部門の記者として、霞が関や永田町から政治・経済ニュースを速報。2018年8月から現職。現地取材にこだわり、全国の交通事業者の取り組みを紹介することに力を入れている。

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