資本主義に「労働組合」が必要とされる根本理由 組合参加率と富裕層所得シェア拡大の深い関係
1980年前後から不平等が再び拡大したのは、ロナルド・レーガン米大統領やマーガレット・サッチャー英首相によって支持され一般に広まった新自由主義的イデオロギーの政治力に拠るところが大きい。
労働組合を弱体化させる法律が多くの国で次々に成立した。ガス・水道・電気などの公共事業、輸送会社、相互会社が次々に民営化され、企業間の賃金格差が急速に広がっていった。その一方で、富裕層の税率は大幅に引き下げられた。
最高税率引き下げは、経済成長率の低下と関係
しかし、最高税率を80%超から引き下げる(税率が半分になることも)ことについては、予想外の影響が生じた。高額所得者の税引き前所得の伸び率が鈍化するのではなく、逆の展開になった。
富裕層は所得の追加的な増分について多くの割合を手にすることができるようになったため、突然、税引き前所得を増加させるインセンティブが強まったのだ。
その結果、OECD諸国では、政府が最高税率を大胆に引き下げたところは、富裕層の税引き前利益が急速に拡大した。つまり最高税率の引き下げ幅が大きい国ほど、富裕層の税引き前所得が急増加したのだ。
それまで最高税率は実質的に収入の上限を決める機能を果たしてきた。それがいったん取り除かれると、富裕層は税負担の減少と税引き前所得の急上昇の両面からの恩恵を受けることになった。
最高税率の引き下げは、当初の目論見では経済成長を刺激するということだったが、現在は成長率の低下と関連していることが判明している。皮肉としか言いようがない。
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