KDDIが単独製作で仕掛ける「配給と配信の融合」

映画「FUNNY BUNNY」は劇場と配信で同時公開

KDDIサービス統括本部 ライフデザインサービス企画推進部 マネジャーで、『FUNNY BUNNY』のプロデューサーを務める金山氏は「どうしてもスポンサー、協賛の立場だと、映画製作の構造が見えてこない。しかし出資という立場で中に入れば、映画について後押しできるかもしれないし、自社の顧客に提供できるものがあるかもしれない。そこでKDDIも映画に出資しようことになった」と、出資を始めた当時の経緯を明かす。

ヒット作に関わることができれば、コンテンツ配信やサービス会員特典などを通して顧客満足度をアップさせることができる。

その後もKDDIは『かぐや姫の物語』『風立ちぬ』『永遠の0』といったヒット作をはじめ、年間で10本近い映画作品に出資し続けている。昨年から今年にかけても『糸』『犬鳴村』『花束みたいな恋をした』といった出資作品がヒットを記録している。

配給との同時配信実現には単独製作が近道

『FUNNY BUNNY』を映画館&配信の同時リリースにした背景にはコロナ禍があり、その延長線上に単独出資製作&配給がある。

「図書館強盗」から、物語が始まる ©️2021「FUNNY BUNNY」製作委員会

「新作が次々と公開延期になり、いつ公開できるのかわからないような状況。映画に出資をしていると、なおさらその厳しさがわかる。劇場には新作が供給されずに、空洞ができているが、その分、ネット配信を家で楽しむお客さまもいる。正解はわからないが、多様なスタイルでコンテンツを求めているのは事実。作られたコンテンツは公開してなんぼだと思う。その提供方法のひとつの選択肢として、今回のプロジェクトを立ち上げた」(金プロデューサー)。

対象の作品をどうするかを考えていったが、やはり映画公開が前提の作品が多く、また権利関係者が多い製作委員会方式だと調整の難しさに直面するという問題点があった。

「当初はすでに(企画や撮影が)動いている作品か、作品は完成したのに公開できない作品の劇場と配信の同時公開を模索していたが、映画館での公開を前提としている作品を配信に切り替えるのは相当難しい。さらに製作委員会に参加する各社にもそれぞれの収支計画がある」(金プロデューサー)。

そこで発想を切り替えて、KDDIの単独出資製作&配給で、劇場と配信の同時リリースを前提とした作品作りをイチから作る『FUNNY BUNNY』を企画するに至った。

KDDIの同僚からも「そんなことができるの?」という声も寄せられたという。しかし、金プロデューサーは、「これはもう、できますとしか言いようがなかった。気持ちが折れてしまうと、おそらく前に進まない。とにかく頑張るしかなかった」と笑ってみせる。

コロナ禍における新たな公開スタイルを模索するというチャレンジであるため、2020年の夏に企画が立ち上がると、そこから怒濤の勢いで映画づくりがスタートする。

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