パナソニック「巨額買収」、不安拭えぬ2つの理由 次世代に負の遺産残す「ジンクス」を断てるか
同社の2020年度の売上高は約10億ドル(約1080億円)。一見規模は大きくないが、サプライチェーンマネジメントのソフトウェア専門企業としては世界最大だ。保有する特許数も400超と競合他社を大きく上回り、3000社を超える顧客企業には米コカ・コーラ社や英ユニリーバ、米スターバックスなどが名を連ねる。
売り切りではなく、継続的に課金するリカーリング型のビジネスを主力とし、売上高に対するEBITDA比率は約24%と高収益だ。
パナソニックとブルーヨンダーは2019年11月に協業を開始、2020年7月にはパナソニックがブルーヨンダー株を20%取得し関係を深めてきた。
もともとパナソニックは法人向け事業として、センサーや通信機器など得意のハードウェアを用いた製造現場の自動化支援、倉庫や店舗の省人化支援を手掛けてきた。同社はこれらの法人向けシステム事業を、2022年4月に予定する持株会社化で「現場プロセス事業」として主力分野と位置づけ、成長を加速させたい考えだ。
成長目指すための「不可欠なピース」
法人向けシステム事業を率いるパナソニックの樋口泰行代表取締役専務は「当社の事業ポートフォリオにソフトウェアやソリューションが加わるのは大きな意味がある」と話す。ブルーヨンダーの買収で知見が足りなかったソフトウェア分野を強化できるからだ。
今回の買収を経てパナソニックが実現を目指すのは、「オートノマス(自律的な)サプライチェーン」という壮大な未来だ。サプライチェーンの上流から下流まで、ソフトウェアと現場に設置したデバイスやセンサーを連携させ、自動運転のようなオペレーションを構築するという。
楠見氏は「サプライチェーンの現場から無駄や滞留が自律的に省かれる世界を実現する」と意気込み、ブルーヨンダーについて「革命的なソリューションを生み出すのに不可欠なピース」と買収への熱い思いを語った。
パナソニックは調査会社のデータを基に、サプライチェーンマネジメント分野の市場規模が現在の180億ドル(約1兆9000億円)から2024年には280億ドル(約3兆円)以上に拡大する見込みを示している。成長市場で着実にシェアを取り、収益につなげる狙いだ。
だがここで問われるのは、パナソニックに巨額買収で成果を出せるだけの実力があるかどうかだ。
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