パート妻は厚生年金に入ると夫の死後損する? 「働きすぎると年金が減らされる」は本当か

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妻自身が扶養を外れ、少しでも高い給与で勤務できるのであれば、給与収入が多くなるだけでなく、妻の厚生年金加入によって妻の年金が厚くなります。年上の妻の厚生年金加入により、夫婦2人での年金の受給期間中もより安心できることにもなるでしょう。もし65歳までに年上の妻の厚生年金加入が20年以上に達し、65歳当時年下の夫が生計を維持(原則、夫の年収850万円未満)されていれば、妻が65歳になってから夫が65歳になるまで加給年金も加算されることにもなるでしょう。

国民年金第3号被保険者は60歳まで、国民年金第1号被保険者と同じく国民年金保険料を納められる任意加入被保険者は最大65歳までなれるのに対し、厚生年金は最大で70歳まで加入できます。厚生年金加入のほうが年金を増額できる機会が長いということにもなっています。

年金は不確実な老後の暮らしに備えるもの

もちろん、個々人が実際何歳まで生きるかはわかりません。妻が年下であっても、夫がかなり長生きし、妻が先に他界することも当然あります。また、妻が遺族厚生年金受給後に再婚をすると、遺族厚生年金は受給できなくなりますので、再婚後は少なくとも再婚相手が健在の間、老齢基礎年金と老齢厚生年金のみを受給することになります。夫が亡くなる前に夫婦が離婚している場合も遺族厚生年金は支給されませんので、この場合もやはり、妻自身の老齢厚生年金が老後の収入として重要な位置づけになります。

今回、遺族年金という視点から取り上げましたが、パートの妻が今後の厚生年金への加入を決めるに当たっての1つの考え方となります。人生は何が起きるかわかりませんが、年金制度は不確実なことへ備える保険となっています。扶養に入っている場合と異なり、厚生年金加入で保険料が掛かることが気になるかもしれませんが、日本人の平均寿命や夫婦の年齢を参考にしつつ、これまで述べてきた将来の不確実なことに備えたいのであれば、厚生年金への加入も意味があるのではないでしょうか。

井内 義典 ファイナンシャル・プランナー

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いのうち よしのり / Yoshinori Inouchi

株式会社よこはまライフプランニング代表取締役。FP、特定社会保険労務士。公的年金が専門で、これまで3000件を超える年金相談業務を経験し、地方自治体職員、年金事務担当者、ファイナンシャル・プランナー向けの年金研修・セミナーで講師も務めている。また、年金、社会保険に関して、専門誌、インターネット等での執筆や、書籍の監修も行ってきており、執筆数については合計で約200本に上る。「FP相談ねっと」認定FP、神奈川県ファイナンシャルプランナーズ協同組合組合員、日本年金学会会員として活動中。

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