カプコンの買収防衛策、なぜ否決された? 海外IR担当の小田民雄副社長に聞く

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――今後、さらに海外投資家比率を引き上げる考えは。

まったくニュートラルだ。積極的に海外IR活動をしているので、欧州やアジアなども増やして地域バランスを取っていきたい。ゲーム産業は将来の日本の基幹の1つ。雇用はもちろんだが、評価を高める努力をする必要がある。

 ――この10年間でカプコンの時価総額を上げてくれたのも海外投資家だ。

その通りだが、彼らの意見は本当に厳しかった。特に印象的だったのは、海外IRを開始して間もない03年4月頃、まだスコットランドのエジンバラに日本株のアナリストがいたとき。初めての訪問先で「まず1つだけほめます。赤字決算のときに来るのは評価します」と言う。その上で「カプコンは1992年に『ストリートファイター』で史上最高売上高、最高益を出して以来、11年でも更新していないのはどう考えればいいんですかね?」と聞いてくる。 

その間に起債もしていたので、「そのリリースに書いていた成長戦略はどうなったのか」と、とにかく追求が激しい。ただ、経営にプラスのアドバイスも言ってくれるので、そこは会社にフィードバックしてきました。

「物言う株主」をどう説得するか

――来年の総会でも買収防衛策を決議にかけますか。

何とか通したい。もっと現実を見据えてステークホルダーと議論する必要がある。われわれがなるほどと思う意見で反対しているかもしれないので、そこを捕まえて話し合いをしたい。これは経営の信任を得るための努力だと考えていて、一番は業績を成長させることだ。

昨年3月から買収防衛策の可決に向けて動いてきたが、実は想定外の出来事もあった。それは金融庁が今年の2~3月に「日本版スチュワードシップ・コード」の導入を決めたことだ。今後、海外投資家と同じように日本の機関投資家も「物言う株主」に変化する可能性がある。今まで以上にIR活動をしなければならないし、その上で新たな判断も求められてくるだろう。

前田 佳子 東洋経済 記者

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まえだ よしこ / Yoshiko Maeda

会社四季報センター記者

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