迷走する国家公務員制度改革、省益優先を打破するため、幹部の政治任用を徹底せよ

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小


 ある政策がたとえ国益にかなうとしても、自分の省庁に関連する裁量・権限や予算、天下り先を減らすことにつながる場合、官僚は激しく抵抗する。逆に、正論であっても省益にケチをつけたりして“掟”を破ると、それこそ「脱藩」するしかないのだ。

キャリア官僚制の弊害

こうした省益優先主義の弊害は大きい。官僚は天下り先を確保し、省益を守るため、裁量・権限を手放そうとせず、むしろ増大を図ろうとする。公益法人や民間企業などの天下り先は、見返りに補助金や税制面の優遇を期待するから、税金の無駄遣いや財政悪化は止まらない。

最大の弊害は、国益の観点から各省庁の政策の優先順位を判断し、メリハリをつける機能が働かないことだ。これを打破するには、天下りと年功序列制の埋め込まれた現在のシステムを壊してしまうしかない。

福井教授は、「天下りは、役所の権限や予算の配分権に結び付いた利権の売買を組織的に行っているようなもの。これを個人でやったら犯罪だ。天下りをなくすには、権限や予算による裁量権を極小化し、サジ加減できないようにするしかない」とし、そのためには、「キャリア官僚制を廃止すべき。キャリアの採用をやめて幹部は政権による短期任用とし、政権が変わったら交代する。一方、執行部門は継続勤務できるが、法令立案や予算編成にかかわらない単純作業に徹すべきだ」と主張する。

要するに、公務員は権限や裁量をちらつかせたり、それに基づく天下りができないようにするわけだ。

若手官僚中心のNPO法人「プロジェクトK」の朝比奈一郎代表(経産省課長補佐)は、「省益優先を改めるには、内閣が局長級以上の幹部を実質任命し、幹部の顔を内閣に向けさせることが大切」と語る。

関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事