ニコン、医療新規参入の勝算 カメラ、ステッパーに次ぐ、第三の柱に期待するが…

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メディカルなど新規事業に2000億円のM&A資金を用意する

が、新規参入の医療分野で慣れないM&Aは、うまくいくのだろうか。

シティグループ証券株式調査部アナリストの芝野正紘氏は、「まだ医療分野での実績が少ないニコンにいい案件が回ってくるか。そしてそれを高値づかみせずに買えるか。この2点が課題となる」と分析する。その上で「中計3年目の目標に向けたM&Aは今からでも間に合うが、来年度の目標(売上高400億円)を達成するには、すでに買収先のメドをつけているのではないか」と指摘する。

ニコンが医療事業に参入する背景には、現在主力の映像事業と精機事業の成熟化がある。精機事業の売上高はここ数年ずっと横ばいで、今日まで成長を牽引してきた映像事業も前期は減収に終わった。そこで、今まで培ってきた技術力が生かせ、「指数関数的に伸びていく市場」(牛田社長)である医療に目をつけた。デジカメ、ステッパーなどの既存事業で、これ以上の市場拡大が見込めない中、医療分野は数少ない成長市場だからだ。

富士フイルムやオリンパスには実績

独自の技術があり、成長への原動力を欲している精密機械メーカーにとって、医療分野は非常に魅力的である。オリンパスや富士フイルムホールディングスなど、すでに医療分野に参入し、大きく成長している会社も多い。ただ、「医療、特に検査機器は参入企業も多く、医療機関の予算が全ての機器で大きく伸びるわけではない。メディカルだから儲かるというのは甘い」と、JPモルガン証券株式調査部シニアアナリストの森山久史氏は指摘する。

いかにニコンが後発として乗り込んでいくのか。この問いに対し、牛田社長は「他社とは基盤となる技術が違う。光技術や精密制御技術などのニコンの強みを生かして、まだ満たされていない医療ニーズに応える。決して他の企業の後追いをするわけではない」と応じた。

ニコンが1917年の設立以来、97年間をかけて積み上げてきた光学技術・精密技術が世界トップクラスなのは、疑いない。しかし、今後はこれらの技術を用いて、医療分野で事業化していけるかがカギとなる。カメラ、ステッパーに続く、第3の柱を育てられるのか。ニコンの生命線はそこにかかっている。

(撮影:梅谷秀司)

渡辺 拓未 東洋経済 記者

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わたなべ たくみ / Takumi Watanabe

1991年生まれ、2010年京都大学経済学部入学。2014年に東洋経済新報社へ入社。2016年4月から証券部で投資雑誌『四季報プロ500』の編集に。精密機械・電子部品担当を経て、現在はゲーム業界を担当。

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