33歳元産経記者が挑む「東北の現実」伝える闘い 住民が「まだ知られていないニュース」を発信

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TOHOKU360は590本以上の記事を公開してきた(2021年3月3日時点)。東北大学とのコラボ企画、2019年10月に東北地方を直撃した台風19号による被災地のリポート、仙台市市民活動サポートセンターと協働してのYouTube生配信など活動は多岐にわたる。通信員には原稿のノルマや編集長からのテーマ設定はなく、それぞれが気になった出来事や話題を取材し、記事として取り上げていく。

例えば、3月4日午前のTOHOKU360は「【高校生が取材した沿岸部の今】汚水の逆流を防いだ仙台の影の功労者『南蒲生浄化センター』」という記事をトップに据えた。そのほかにも「7mの津波が来た仙台港・太平洋フェリーのいま」「福島県沖地震『最大震度』を観測した郷里・相馬の街は」といった震災関連の記事が並ぶ。

もちろん、それだけではない。宮城県女川町での単身赴任先での日常を切り取る連載、大学生の活動を紹介した記事、生きづらさを取り上げたものなど多種多様だ。今年の1月1日には「9年9カ月の旅どこで? 震災で流出した船が八丈島に漂着 保存に向け有志動く」を掲載した。

安藤さんは言う。

「通信員には個性がすごい方が多くて。例えば、仙台市には野良猫の問題を2年以上追っている通信員がいるんですよ。とにかく猫が大好きで。殺処分をなくすためにはどうすべきかをずっと取材をしています。NPO法人や市の職員に取材、広島まで取材に行ってきました」

高校生が取材してまとめた記事(画像:TOHOKU360のサイトをキャプチャ)

ハッシュタグ企画が真骨頂

TOHOKU360は毎年3月、SNSでハッシュタグ企画を手掛けてきた。全国の人に知ってほしい風景を、東北に住んでいる人たちの写真を通して発信する。投稿された写真は、サイト内の記事やTOHOKU360のYouTubeチャンネルでまとめる。今年はまだ詳細を決定していないが、2020年は「#今見せたい東北」とハッシュタグを打った。

その企画に込めた狙いこそ、TOHOKU360の真骨頂かもしれない。安藤さんが言う。

「毎年、3月になると、大手メディアの報道にはセンセーショナルなものが多くなります。私たちが3月11日に『あなたの「日常」の写真をください』と言って写真の投稿を募った際、ひな人形の写真を送ってくださった人がいます。すごくきれいな、おひな様が写っていて。そのひな人形、実は震災で一度流されていたんですね。

写真から、みんなのリアルな体験が流れてくるんです。大手メディアなどによって外からまとめてもらうということは大切なんですが、生活の中で日々を記録する人がいてもいいと思います」

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