なぜ日本企業は、海外進出が"下手"なのか? 野村証券も第一三共も…積み上がり続ける失敗例

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第2のオプションは、進出先を変えることである。言うまでもなく、国レベルでの変更は困難を伴うが、時にはちょっとした方針を変更するだけで事態が改善される場合もある。メーカー数社からなるドイツのグループは、中国進出にあたり通常の大都市を避け、小都市を選定した。その地域には、彼ら以外の企業は存在しないため、各企業は互いに従業員の引き抜きをしないことで合意できた。これによって、各企業は人材を競合他社に引き抜かれるというおそれなしに、労働者を訓練できるようになったのである。

第3のオプションは、適切な人材の確保が難しい場合には、別の人材に目を向けるということである。人材不足が深刻な市場においても、優秀な労働者はある程度存在するものである(ただし人件費が高騰する可能性は高い)。

第4のオプションは、当該国とのギャップや不利な条件を受け入れることである。言うまでもなく、これは「よそ者の不利益」のコストをすべて自社で負うことになるので、致命的なミスとなる可能性がある。

第5のオプションは、国内にとどまることである。何もしないことはつねにオプションのひとつであり、時には最善の選択となる場合もある。ビジネスは、それがどこでなされるにせよ、価値を生み出し、企業が利益を得ることが目的だ。それが不可能であれば、海外市場進出のプレッシャーに抵抗するのが最も理にかなっている。

これらの分析を行い、それに沿って業務方針を決定、遂行するにあたり、関連地域の実地経験を持つ人々からの情報は、しばしば非常に重要になる。しかし、残念ながら、現在の日本企業の多くは、かつてないほど対外的に閉鎖的になっているようである。

海外で学んだり生活をしたことがある日本人は、日本企業への就職がしにくく、職を得てもなかなか実力を発揮できない。実際のところ、今日、仮に岩倉具視が日本の大企業へ就職を希望したとしても、日本の企業文化にうまく適応しないという理由で採用されないだろう。その結果、海外経験が豊富な日本人は外資系企業で働くケースが多くなり、それらの企業の日本における「よそ者の不利益」を減らす手助けをしていくことになる。

突き詰めていくと、日本企業が自分たちの「やり方」を維持していきたいなら、現在「不適応」と判断されている人材も受け入れていくことこそが、今、必要なのかもしれない。

ミハエルA. ヴィット INSEAD教授

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Michael Witt

INSEAD教授、 アジアビジネスおよび比較経営論 (Professor of Asian Business and Comparative Management)

http://www.insead.edu/facultyresearch/faculty/profiles/mwitt/
 

フランスINSEAD(シンガポールキャンパス)で国際ビジネスを専門に研究および教鞭をとる。ハーバード大学ライシャワー研究所のAssociate in Research事業運営や経営がその社会によっていかに多様なものか、また、自国外で事業を展開する企業がこの多様性によってどのような課題に直面するかについて研究している。ハーバード大学Ph.D.および修士、スタンフォード大学学士。日本、中国、シンガポール、フランス、ドイツ、米国で暮らした経験がある。ドイツ出身。

主な著書に『The Oxford Handbook of Asian Business Systems』 (2013, Oxford U. Press, with Gordon Redding)、『Major Works in Asian Business and Management』 (2012, SAGE)などがある。

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