スバルの回復ムードに水を差す「半導体不足」 わずか3カ月後に業績修正を余儀なくされた

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ホンダや日産に比べると、スバルは販売見通しを引き下げた割合が高い。その要因は販売戦略だ。スバルはターゲット層を絞り、展開車種を絞り込んでいる。比較的大型のCセグメント、Dセグメントといわれる車が中心で、開発費や製造コストを抑えるため共通化している部品も多い。

価格帯も高めのCセグメントやDセグメントには、自動ブレーキや手放し運転といった先進安全装備などの高機能な装備の搭載が増えるなど、車載半導体をより多く使う傾向にある。さらに、部品の共通化で、特定の部品が不足すると生産への影響も大きくなってしまう。

半導体不足の対策について岡田稔明CFOは「在庫を持ちすぎることもリスクになる。どのくらい在庫を持っているのがいいのか、もう一度しっかり考えなければならない」と話した。

在庫の確保はいつまで可能か

また、半導体不足がスバルならではのリスクを再燃させるおそもある。アメリカでの在庫不足だ。アメリカの一般的なディーラーの場合、年間販売台数の60日分の在庫を持つことが多い。だが、スバルはコロナ前から需要が旺盛でディーラー在庫が20~30日と少なかった。コロナ禍で2020年3月から6月にかけて大規模な生産調整を余儀なくされた結果、7月には在庫が20日を切る水準になった。

特に売れ筋のフォレスターやクロストレックを中心に在庫水準が極端に落ち込んだ結果、売り逃しも発生する状況で、昨夏以降は早々に工場をフル稼働に戻して在庫の積み増しを急いできた。スバルの中村知美社長は以前から、「(アメリカの)在庫を最低1カ月から最大1.5カ月分程度確保したい」と語っていた。

実際、2021年1月末の在庫水準は45日程度まで回復しているという。岡田CFOは「当面は出荷が細るが頑張っていきたい」と言うがリスクは残る。「(半導体不足の)影響は来期まで残ると見ているが、どの程度なのかはわからない」(岡田CFO)からだ。

昨年、アメリカでの販売回復について、中村社長は「比較的世帯年収が高く、不況に強いお客様に支えられている」と述べていた。半導体不足の影響を解消できず減産が長引けば、再び在庫不足での売り逃しに陥る可能性も否定できない。主戦場のアメリカにおけるディーラー在庫の水準が、スバルの回復スピードを占う重要な指標となりそうだ。

中野 大樹 東洋経済 記者

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なかの たいじゅ / Taiju Nakano

大阪府出身。早稲田大学法学部卒。副専攻として同大学でジャーナリズムを修了。学生時代リユース業界専門新聞の「リサイクル通信」・地域メディアの「高田馬場新聞」で、リユース業界や地域の居酒屋を取材。無人島研究会に所属していた。趣味は飲み歩きと読書、アウトドア、離島。コンビニ業界を担当。

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