魂を売らずに成功する 伝説のビジネス誌編集長が選んだ飛躍のルール52 アラン・M・ウェバー著/市川裕康訳 ~名編集長が編み出したイノベーションの経験則

魂を売らずに成功する 伝説のビジネス誌編集長が選んだ飛躍のルール52 アラン・M・ウェバー著/市川裕康訳 ~名編集長が編み出したイノベーションの経験則

評者 中岡 望 東洋英和女学院大学教授

 著者は『ハーバード・ビジネス・レビュー』の元編集長である。学術誌の同誌を現在のスタイルに変えた功績は大きい。20年以上前、その現職だったとき、「何部売れるかよりも、クレムリンで1冊定期購読されていることのほうが誇りに思う」と語っていたのを思い出す。

同誌の編集を離れ、独立して最も成功したビジネス誌といわれる『ファスト・カンパニー』を創刊したが、同誌の出資者を探すのに数年の浪人生活を送っている。当時、ボストンで会食したとき、表紙の候補を何枚も持参し、「『ローリングストーン』誌のようなビジネス誌を作りたい」と熱く語っていた。その夢を見事にかなえた。

著者は、編集者であり、ジャーナリストであり、起業家でもある。つねに小さなノートを持ち歩き、興味ある発見をすると、それに書き記すのが長年の習慣である。本書は、「20年以上前にハーバード大学のレビット教授から教わったやり方」という、そのノートをベースに書かれた。単にビジネスで成功するための秘訣について書かれた本ではない。「私たちが成功し、さらに大事にしている人や物事を失わずに勝者になる、つまり『魂を売らずに成功する』ための経験則」が記されている。

本書では「52のルール」が取り上げられているが、ここでは10番目のルール「“良い答え”よりも“良い質問”」に触れておこう。企業がイノベーションを求めるなら良い質問が必要だという。しかし、「企業の中でなかなか良い質問が出ないのはなぜか」。人は会社では賢いと思われる必要がある。そのためには「質問した人をバカにするのが一番いい」。読者には思い当たる節があるだろう。

52のルールは、同時に著者の人生論でもある。いろいろ発見がある本である。

Alan M.Webber
イノベーションのための執筆活動のほか、国際会議、ビジネススクール、非営利団体の理事やアドバイザーを務める。1970年米アマースト大学卒業後、米運輸省特別補佐官など経て、『ハーバード・ビジネス・レビュー』『ファスト・カンパニー』各編集長を歴任。

英治出版 1680円 261ページ

  

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