マツダ「RX-7」パーツ復刻、今は旧車がアツい! 絶版車回帰、メーカーが考えるブランド再建

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25年ルールによって急激に需要が高まり、中古車価格が高騰しているR32型スカイラインGT-R(写真:日産自動車)

この25年ルールにより、例えば、前述の日産・スカイラインGT-R、特に1989年発売のR32型などは人気が高く、新車価格をはるかに上回る1000万円を超える価格で取引されているものもあるという。自動車メーカーが旧車の再供給をはじめた背景には、こうした海外における需要の高まりもあるのだろう。新たなビジネスにつながることを考えれば、メーカーによっては、パーツを復刻する対象車種を今後拡大する可能性も十分にある。

2020年にマツダやスズキが創立100周年を迎えるなど、今や老舗と呼べる国内の自動車メーカーも多い。おのずと、過去に生産したモデルの中には、ビンテージカーとして世界中の愛好家に支持を受けている「名車」が増えているのも事実だ。

日本の自動車メーカーは、1960年代頃から世界一の自動車生産国を目指し、「とにかく作る」ことに邁進してきた。そのぶん、過去に人気を得た名車たちについては、今まで置き去りにされてきた感がある。

大量生産・大量消費からの脱却を図る自動車メーカー

かつての「大量生産・大量消費」という市場原理が崩壊した現在、旧車パーツを再販する各社の新たな試みがはじまったことは、そういった過去から脱却するいい契機でもある。自社の古いモデルを愛する人たちへのサービスは、自動車大国ながら今まで「クルマの文化がない」といわれた日本に、欧米に負けない「カルチャー」を育てるための第一歩となるだろう。そして、結果的に、それが自社ブランドの力を押し上げることにもつながる。

「100年に一度の変革期」といわれている今の自動車業界。自動運転やクルマの電動化などの先進テクノロジーは、テスラやグーグルといった新規プレイヤーの参入を生み、徐々にサバイバル戦の様相を呈してきている。日本の自動車メーカーが生き残る術には、グローバル市場における技術力や生産力の強化だけではなく、実はこうした「伝統」に裏付けられた新しいブランド力の創造も必要なのかもしれない。

ともあれ、今回のマツダRX-7パーツ再販は、自動車業界や愛好家にとって大きな話題だ。特にRX-7は映画やアニメ、さらにレースやドリフトなどを通し、若い層にも知名度が高く、実際に所有するユーザーも多い。国産旧車のパーツ再販は今のところスポーツカーが中心だが、こうした流れが広がれば、日本の自動車メーカーもひとつ上のステージに進めるのではないだろうか。また、それはユーザーにも喜ばしいことだ。

平塚 直樹 ライター&エディター

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ひらつか なおき / Naoki Hiratsuka

1965年、福岡県生まれ。福岡大学法学部卒業。自動車系出版社3社を渡り歩き、バイク、自動車、バス釣りなどの専門雑誌やウェブメディアの編集者を経てフリーランスに。生粋の文系ながら、近年は自動運転や自動車部品、ITなど、テクノロジー分野の取材・執筆にも挑戦。ほかにも、キャンピングカーや福祉車両など、4輪・2輪の幅広い分野の記事を手掛ける。知らない事も「聞けば分かる」の精神で、一般人目線の「分かりやすい文章」を信条に日々奮闘中。バイクと猫好き。

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