実戦!地頭力(上) 花粉症の経済効果、地下経済の規模を計算する 地頭力を鍛える

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風俗店の客足から地下経済を推計できるか

脱税、麻薬取引、売春などの非合法ビジネスは、公式統計からは捕捉できない。そこで市場規模を個別に推計して合算するボトムアップ方式で算出することになる。作業は仮説→実行→検証→仮説という試行錯誤の繰り返しとなる。フィールドワークも欠かせない。

たとえばソープランドの非合法所得はどのくらいなのか。BRICs経済研究所の門倉貴史代表によれば、1店舗当たりの個室数は8室。平均的なサービス時間は90分、待ち時間は6分となる。このデータを基に計算を行うと、1店舗当たりの1日の客数は40人程度、年間では1万5000人。平均的な料金を5万円とすれば、1店舗当たりの売り上げは7億5000万円ということになる。これに全国のソープランド店数1306店(2005年)を乗じると、市場規模は9819億円という結果になる。


 ここで注意しなければいけないのは、特に地下経済に関していえば、公式統計は当てにならないということだ。たとえば性風俗雑誌への広告数と警察のデータを付き合わせると、届け出せずに営業を行っている店が実に多いことがわかる。ソープランドの場合には、届け出のないモグリ営業はほとんどないが、ファッションヘルスやイメージクラブの場合にはモグリ営業がかなりの数に上る。門倉氏の推計によると、全国のファッションヘルス、イメージクラブの店舗数は公式統計のおよそ2倍にも達するという。

なお、ソープランドの売り上げのうち、税務署に申告されるのは料金の4分の1程度の入浴料のみ。残り4分の3の特殊サービス料は、女性の懐に入ってしまい、ほとんど申告されない。よって、地上に表れない非合法所得は7364億円(=9819億円×0・75)と推計できる。

このように公式データ、身近なデータ、そして仮定を駆使することによって、他の性風俗産業や暴力団系ビジネスの非合法所得を合算すると、日本の地下ビジネスの経済規模はおよそ25・7兆円。国内GDPの5%に相当し、国家予算の社会保障関係費(約20兆円)をはるかに超える巨大な経済規模となる。

取材協力(敬称略)
第一生命経済研究所主任エコノミスト・永濱利廣、BRICs経済研究所代表・門倉貴史

(週刊東洋経済編集部 撮影:吉野純治、尾形文繁、風間仁一郎、鈴木紳平、田所千代美、今井康一、山内信也)

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