北朝鮮が「企業経営の独自性」を重視? 現地の学術誌が指摘する経営管理方式

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李教授はさらに、独立採算制を導入した理由について、「経済活動が広がる中、企業の現場で、より客観的な経営管理を行えるようにするため。また、国家がすべての企業所や工場を管理し、彼らに対する報酬などの保障が難しくなったため」という現実も打ち明けている。

この論文には、企業体の独自性を強調しながらも、同時に「国家の統一的指導の下」という言葉がよく出てくる。あくまでも社会主義的な中央集権型の経済管理の枠組みは動かさないが、現場の特性や個性に合わせて経済活動を行うようになったと解釈できる。

「人民が主人」をことさらアピール

金正恩時代の経済管理の特徴としてこれ以外にも、「革命と建設における主人は人民大衆であること」と「生産手段に対する社会主義的所有をしっかり守っていくこと」の2点を上げている。これは、あくまでも経済活動は国民一人一人の力量によるものであるが、その生産手段は社会主義的所有の形でしっかりまもっていくことであり、ここでも社会主義的枠組みから逸脱するなと釘を刺している。

今回、北朝鮮の代表的な経済理論誌に「金正恩時代の経済管理方式」としてしっかりと掲載されたことは、前述のような試みがすでに実験的に行うレベルから一段上がり、本格的に全国へ導入していくという現政権の方針を表明したものだろう。

経済単位の独自性を強化すること=金正恩の経済路線とアピールしたことは、今後の北朝鮮の経済運営もこのような方向性を持ってなされるということだが、それには原材料など生産物資の調達をはじめ、国内に依存したままでは限界にぶつかる。この方向性を維持しつつ、どこまで外国との経済関係を構築していくのかが注目される。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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