
また、満点を取れなかった子には、「復習して、自分が受けたいときにもう一度テストを受けてね。その点数を記録してあげるからね」と言って再テストを作りセカンドチャンスを与えるようにしています。1週間後にテストを返却すると「こんなテスト、やったっけ?」といった反応になりがちですが、テスト当日のうちに返却して再チャンスを与えると、子どもは「よし、やるぞ!」と、自主的に家で学び直してくるんですよ。教育における即時評価の有効性はよく知られていますが、やはりフィードバックは早いほうが子どもたちの学習意欲が高まると感じています。
日常のテストは成績のためではなく、学習が身に付いているかを自分が知るためのものであるべきだと思うので、テストはこのような形を採用していますが、「時短」と「子どもの学びの定着」という一石二鳥の成果が得られています。
――この手法は、どの学年でも有効ですか。
上の学年ほどこのやり方を喜びますね。塾に通う子は、自分の実力の結果を早く知ることができてうれしいみたいです。一方で先取り学習をしていない子も復習したうえでの再チャンスがあるので、落ち着いて学習に取り組めるようです。ただ、教員としては記述式など後からじっくり確認したい設問もありますよね。こうした設問が増える高学年では、低学年に比べて時短につなげるのが難しい部分はあるかもしれません。
――自分が学びたいことに取り組む「自主学習ノート」を導入しているそうですが、そのノートもすぐ返しているのですか。
はい、これも即時評価が大事。提出されたノートは、休み時間などにチェックしてその日のうちに返却します。子どもたちはコメントを楽しみにしていたり、自主学習の続きを早くやりたいと思っていたりするので。ただ、丁寧すぎるコメントは残業要因になるので、簡単でいいと思います。その代わり、僕は絵を入れるなどの工夫で子どもたちのモチベーションアップを図っています。

教材研究の時間を短縮する方法とは?
――ほかにも業務効率化で実践していることはありますか。
僕は杉渕鐵良(すぎぶち・てつよし)先生が開発した「ユニット型授業構成」(※1)を取り入れ、1コマの45分間を細分化して教材研究の効率化を図っています。
※1 参考:『全員参加の全力教室―やる氣を引き出すユニット授業』(日本標準、杉渕鐵良・ユニット授業研究会)
テレビのバラエティー番組は、スポンサーがいるので視聴者にCMを見てもらうため、あの手この手で面白い番組を作っていますよね。昔放送していた「笑っていいとも」がいい例。タモリさんが歌いながら出てきて、ミニコーナーがあってテレフォンショッキングが始まり……と、60分の中で型が決まっていて、テンポよく進行するので視聴者は飽きない。ユニット型授業構成とは、こうしたバラエティー番組のように時間を短く分割して行う授業です。僕は国語であれば次のような授業構成にしています。
・辞書引き:5分
・音読:5分
・教科書の学習:15分
・作文:15分
こうして短時間の学習活動で構成すると、どの子も集中力を切らさず最後まで授業を受けることができ、「こんなに早く終わると思わなかった、もっとやりたい!」と、次の授業が楽しみになるんです。また、短時間の学習活動を年間で何十回も反復するので、気づけば百人一首も辞書引きの方法も覚えてしまう。子どもたちは楽しみながら力をつけることができるのです。教員側も、各活動の時間が短い分、内容の精選は必要になりますが、45分間同じ内容を扱う授業を考えるよりも、準備にかける時間は短縮できます。