国の責任問う原発訴訟、「本丸」高裁判決の行方 判決次第では、国の原発政策は行き詰まりも
原告の一人で、福島県いわき市から群馬県前橋市へ避難した丹治杉江さん(64歳)は、「今回の裁判を通じて、原発というものが、国民の生命と財産、暮らしを守る絶対的安全規制の下で建設されているのではないことが身にしみてわかった」と話す。
丹治さんは夫(67歳)との避難生活が10年近くに及ぶ。「私たちのような避難指示区域外からの避難者は『自主避難者』と呼ばれているが、自主避難者に対する国の姿勢については『絶対に許せない』」と丹治さんは語気を強める。
国の準備書面に記されたものとは?
丹治さんが憤るのは、東京高裁に提出された国の「第8準備書面」に記述された次の一文だ。
「自主的避難等対象区域からの避難者について、特別の事情を留保することなく、平成24年(2012年)1月以降について避難継続の相当性を肯定し、損害の発生を認めることは、自主的避難等対象区域での居住を継続した大多数の住民の存在という事実に照らして不当」
「自主的避難等対象区域は、本件事故後の年間積算線量が20ミリシーベルトを超えない区域であり、そのような低線量被ばくは放射線による健康被害が懸念されるレベルでないにもかかわらず、(原告の主張を認めることは)平成24年1月以降の時期において居住に適さない危険な区域であるというに等しく、自主的避難等対象区域に居住する住民の心情を害し、ひいてはわが国の国土に対する不当な評価となるものであって、容認できない」
丹治さんら避難指示区域外に住んでいた住民が避難し続けることについて、その境遇に思いを致すどころか、その存在自体が元の地域の評価を不当におとしめるというのである。「そもそも原発事故により放射性物質を拡散させ、愛すべき動植物すべてのいのちと国土を汚染させたのは誰なのか」と丹治さんは問いかける。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら