仮想通貨で「170万円騙し取られた」男性の告白 マッチングアプリの女性に乗せられて挑戦

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すると、とんでもない事態になりました。15000ドルあったはずの画面上の金額が突然「0」になってしまったのです。「これから、兄に相談してアドバイスをもらいます」と女性は慌てたようにメッセージを送ってきます。しかしこの状況は詐欺師の演出です。さらなるアプローチを仕掛けてきます。

数日後、兄からLINEのメッセージが届きました。「妹のアドバイスが悪く、投資金額がなくなってしまい、すみませんでした。私に挽回のチャンスを与えてください」。

しかし男性はもうリスクをとるのはやめようと考えていたので、前向きな返事はせずにいました。それでも兄はしきりに「私が必ず、損失を取り戻させてあげます」と言い続けます。約1カ月後、根負けした形で、男性は50万円を送金してしまいます。

サイトが突然閉鎖

すると、その日に539ドル(約5万4000円)の利益が出ます。ところが2日後、再び急展開が起こります。サイトが突然閉鎖されてしまったのです。

アクセスしても見られない状況に、慌てて男性が兄に連絡をすると、「諸事情で、サイトは閉鎖になりました。別サイトに登録し直してほしい。残っていた資金は、新しい取引所に移せる。ただサイトに登録する際には、新たな保証金50万円が必要」と言ってきます。

お金を支払うのは難しいと伝えると、今回は妹が迷惑をかけたので半分は自分が出すから25万円分だけ負担してほしい、とまで言い出します。突然閉鎖されたうえに、追加の保証金も要求する態度を怪しく感じ、このサイト名を検索すると「詐欺サイト」との結果が出てきました。

ここで詐欺と気づきます。「解約して資金を引き出したい」と兄に伝えると「税金の前支払いが必要なので、日本円で約11万円を送金するように」と言われます。もちろん男性はお金を払いませんが、「あなたを助けたい」「6万円払えば大丈夫」と要求金額を下げてきました。

過去の詐欺の手口を見ても、相手の懐事情に合わせて、金を取れるだけ取って消えるのが目的で、いくらお金を払っても出金などできません。このように投資詐欺では、巧みなトラップで相手の心を乱高下させながらだましてくるのです。

多田 文明 詐欺・悪徳商法ジャーナリスト

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ただ ふみあき

これまでに悪徳業者などへの潜入数は100カ所以上に及ぶ。数々の現場経験と取材から、詐欺・悪質商法に詳しいジャーナリストとして、多数のテレビ・ラジオに出演している。著書「ついていったらこうなった」(彩図社)はフジテレビで番組化され、2007年~2011年の間、ゴールデン枠の特番で第8弾まで放送された。また、騙されないための講演も数多く行っており、2017年~2018年にかけて、消費者庁「若者の消費者被害の心理的要因からの分析に係る検討会」の委員も務めた。著書に「だまされた!だましのプロの心理戦術を見抜く本」(方丈社)などがある。

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