花王、コロナで覚悟した「デジタル化」の本気度 データで需要を高精度予測、無駄な生産撲滅へ

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花王の長谷部佳宏社長は「デジタルトランスフォーメーションなしに、この先の事業はない」と語る(撮影:梅谷秀司)
花王にとって8年半ぶりの社長交代となる。前任の澤田道隆氏に代わって社長に昇格したのが専務の長谷部佳宏氏だ。
長谷部氏にとって平穏な時期の社長就任ではない。ユニ・チャームやライオンなど、日用品各社が巣ごもり消費の追い風を受け、純利益は過去最高を予想しているのに対し、花王は化粧品事業が足を引っ張り、2020年12月期は減収減益の見通しだ。
2020年に社長に就任した主要企業トップに聞く連続インタビュー。特別編の今回は、1月1日に社長に昇格する長谷部氏に2021年の展望と課題を聞いた。

DXなしにこの先はない

――コロナ禍で社長という重責を引き継ぐことになりました。

経営を任されるということを澤田前社長に言われた時に、2人で話をした。「何も起こらない経営なんてない。社長就任と同時に何かが起こるのか、それとも後から起こるのか、という違いだけだ」という話をした。

さまざまな方にこのタイミングでの社長就任を心配されるが、こんなチャンスはない。どん底からどれくらいあがるか、意識を1つにしていくことができる。私は3年前から社内のデジタル化を推進する先端技術戦略室の統括として改革を進めてきたが、(花王の)デジタルトランスフォーメーション(DX)は遅れていた。今までのDXが遅れた状態でも、業績が堅調に推移してきたからだ。

コロナ禍によって変化を受け入れる心構えができたと思っている。DXなしにこの先の事業はないとすべての社員がわかっている。

――花王は具体的に、どんな形でデジタル化に取り組んでいるのですか。

花王がこれから本気で取り組まないといけないのは、無駄なものを一滴たりとも作らないこと。品切れをさせないために過剰に生産し、ものすごい量の商品が捨てられたり、返品されたりする。これは間違っている。シミュレーションですべてのお客さんのニーズを把握すれば、無駄なものを作らないし、運ばない。これができたら環境問題は前進するし、世界で一番儲かる企業になると思う。

(長谷部氏が在籍していた)先端技術戦略室では、シミュレーションをして無駄な工程を省くということをやっていた。今回、プリファードネットワークスの丸山宏フェローを花王に招いたのは、需要予測など少ないデータで精度の高いシミュレーションをすることができるからだ。生産や運搬をデジタルシミュレーションで管理する、「世界のお手本」になりたい。

この記事の続きは東洋経済プラスの短期連載「新社長12人 2021年の展望」で無料でお読みいただけます。連載では以下のトップインタビューも配信しています。

①インタビュー/日本ペイントホールディングス・田中正明社長
②インタビュー/クボタ・北尾裕一社長
③インタビュー/カゴメ・山口聡社長
④インタビュー/三井化学・橋本修社長
⑤インタビュー/岩谷産業・間島寛社長
⑥インタビュー/イオンモール・岩村康次社長
⑦インタビュー/花王・長谷部佳宏社長
星出 遼平 東洋経済 記者

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ほしで・りょうへい / Ryohei Hoshide

ホテル・航空・旅行代理店など観光業界の記者。日用品・化粧品・ドラッグストア・薬局の取材を経て、現担当に。最近の趣味はマラソンと都内ホテルのレストランを巡ること。

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