プログラミング「理解ない先生」の巻き込み方 カギは「教員コミュニティー形成」と「振り返り」

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小学校でプログラミング教育が必修化され、「1人1台PC」のGIGAスクール構想は2021年3月末までに多くの学校で実現する見通しとなった。「ICT教育」への地ならしは順調に進んでいるように見えるが、肝心の教員の意識は追いついているだろうか。熱心にプログラミング教育を展開しようとしても、周囲の理解が得られにくい場合はどうすればいいか。集中連載最終回の今回は、前例のない中で効果的に周囲を巻き込んでいく方法を探っていく。
第1回独学?習う?プログラミング授業の準備と現実<教員のスタンス編>
第2回中高を視野に「プログラミング授業」は小1から<授業設計の基本思想編>
第3回プログラミング授業の作り方と教材選びの要諦<教科・ソフトの選び方編>
第4回 「プログラミング授業」意外な落とし穴と対処法 <ICT支援員編>

教育だけが、なぜかICTを敬遠する

今や、ビジネスでPCなどのIT機器を使わない企業はほとんどないだろう。しかし、学校はどうか。教室で日常的に使われていないのは「1人1台PC」のGIGAスクール構想が「ようやく進んでいる」現実からも明らかだ。なぜ学校のICT化がここまで遅れたのか。どうやら、予算だけの問題ではないようだ。全国に先駆けて公立小学校でのプログラミング教育を行うため、当時校長を務めていた学校で「1人1台PC」の環境を実現させた合同会社MAZDA Incredible Lab CEO 松田孝氏は、自身の経験を次のように語る。

「1人1台という最先端の学びの環境が整ったので、教員はもろ手を挙げて歓迎してくれると思いましたが、逆でした。プログラミングの授業をすることを拒否されるだけでなく、『意味がわからない』と公の場で非難されたこともあります。保護者や地域の議員からも批判され、説明会の開催を要求されました。『学校は豊かな人間関係を形成する場所なのに、それを阻害するようなICT活動はやめてくれ』という趣旨の批判をいちばん言われたように思います。インターネットによって世界が変わり、交流の幅が圧倒的に広がったことは誰もが知っているはずなのに、保護者は教育となるとなぜか別物と考えてしまうように感じています」

保護者にしてみれば、PCに向かう姿が、ゲームに没頭する様子と同様に見えてしまうのかもしれない。インターネットで好ましくないコンテンツにアクセスするのではという不安もあるだろう。ただ、これらの問題はフィルタリングや機能制限、MDMを導入することで容易に解決できる。むしろ、こうした周囲の不理解の本質は「変化を嫌う」ところにありそうだ。東京学芸大学ICTセンター教育情報化研究チームの加藤直樹准教授はこう話す。

※MDM:Mobile Device Management(モバイル端末管理)。アプリケーションや機能の利用制限・監視を一元管理できるシステム

東京学芸大学 ICTセンター 教育情報化研究チーム 准教授 加藤直樹
東京農工大学大学院工学研究科博士後期課程修了。日本学術振興会特別研究員を経て2004年より東京学芸大学准教授。博士(工学)。ペン入力を採用したインターフェースのデザインやシステムの開発および教育の情報化に関する研究、教員養成へのICT活用、教育の情報化に対応できる教員の養成に取り組んでいる。著書に東京学芸大学プログラミング教育研究会が編集した『小学校におけるプログラミング教育の理論と実践』(学文社、共著)がある
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