プログラミング「理解ない先生」の巻き込み方 カギは「教員コミュニティー形成」と「振り返り」

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「東京学芸大学の近くの小学校の話ですが、コロナ禍である先生が、毎日子どもたちに向けたギターの弾き語り動画をYouTubeにアップしたんです。そうしたら『私もやりたい』という先生が徐々に増えて、最終的には学校の取り組みとして全クラスが『朝活』をZoomを用いて行うようになったんですよ。もしかしたら中には乗り気じゃない先生もいたかもしれませんが、子どもたちの楽しそうな姿や、先生全員で参加する状況が背中を押してくれたと思うんです。そうやって楽しく取り組んでいくと、新たな取り組みでも自然に広がっていきますね」

校内で仲間を探すのが難しい場合は、校外でつくればいい。利根川氏によれば、オンラインのコミュニティーも登場しているという。

「例えば、2020年4月にスタートしたType_T(https://typet.jp/)は、プログラミング教育にチャレンジしている先生方の集まる場として機能しています。毎週悩みを共有する場が用意されていて、『フィードバックをもらえるのでいい振り返りになる』との声があったり、兵庫と福島の先生がオンラインで交流プログラミング授業をしたりと、単なる交流コミュニティーではなく実践につながっているのが特徴です。校内で孤軍奮闘するだけでは心が折れてしまいますので、こうした地域や学校のしがらみにとらわれないコミュニティーに参加し、『巻き込み力』を磨いていくのも1つの方法でしょう」

不登校児童のコミュニケーションにも効果的

Type_Tが優れているのは、以前から定着している校内研究と同様に「振り返り」ができるところだろう。第三者からフィードバックを得ることでプログラミング教育の価値が再確認できるとともに、取り組みのブラッシュアップにもつながる。松田氏は、児童が効果的にこの「振り返り」ができるのもICT活用のメリットだと力説する。

「活動を自分自身で振り返ることが、新たな学習指導要領にも盛り込まれた『学びに向かう力』の源泉となります。それを学級の中で共有することが効果的なのはもちろんですが、ICTならばそれが実に容易なんです。アナログでやろうとすると、紙で書かせたものを先生が集めて、別の紙にまとめ直して印刷して配るといったいくつもの工程が必要で、忙しい先生方はとてもそこまでできません。でも、PCを活用すれば、それらの手間がいっさい不要となるんです」

しかし、授業の感想を児童に書かせるのはそれほど簡単ではないはず。同級生にその内容を見られたくないという意識も働きそうだ。しかし、松田氏の経験では、そういうことはなく多くの生徒が指定の場所に入力するという。

合同会社MAZDA Incredible Lab CEO 松田孝
東京学芸大学卒業、上越教育大学大学院修士課程修了。早稲田大学大学院博士後期課程在籍中。東京都公立小学校教諭、狛江市教育委員会主任指導主事(指導室長)、小学校校長を3校歴任後辞職。現在総務省地域情報化アドバイザー、群馬県ICT教育イノベーションプロジェクトアドバイザー、金沢市プログラミング教育ディレクター等も務める。著書に『学校を変えた最強のプログラミング教育』(くもん出版)、『プログラミングでSTEAMな学びBOOK』(フレーベル館)がある

「確かに、ノートに書かせようとすると、友だちに見られたくなくて隠します。恥ずかしいんですね。ところがPCだとみんな回答してくれるんです。私もなぜ書いてくれるのか不思議でしたが、実は子どもたちは自分の字を見られたくないんですね。『下手な字・汚い字』だと思い込んでいるんです。でもPCなら字の巧拙は関係ないじゃないですか。私がずっと使ってきた授業支援システム『schoolTakt』ならば、コメントに対してコメントをつけたり、『いいね』をつけたりもできます。そうすると、クラス内の感情の交流が盛んになっていくんですよ

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