驚きの事実、静岡県リニア文書に「捏造」あった 議事録に記載ないのに委員意見として文書作成

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市川浩司・県水利用課長は「塩坂氏の意見は仮定のうえの仮定であることを認める。(県議会環境委員会で塩坂氏の主張について)可能性が十分あると答えたが、その根拠は何もない」と言うのだ。

第3の問題は、27日の同会議には、地元の井川地区自治会や観光協会などの代表が出席、「(水問題は)東電の田代ダムを活用して解決できないのか」「井川ダムなどのダムの活用で水問題を何とかしてほしい」「過疎地域に生活する者としては早期に工事を始めてほしい」などの真摯な意見・要望が出されていたが、県の文書にはひと言も盛り込まれていないことだ。県は「流域住民の意見を尊重する」と言ってきたが、その流域住民の意見を無視するのはなぜだろうか。

塩坂氏は県の「利害関係者」

さらに言うと、塩坂氏は県の建設環境に関する調査、計画を請け負う環境コンサルタントを務めてきたから、静岡県の利害関係者である。JR東海を相手取った静岡県リニア差止訴訟準備会では講師だった。県は有識者会議の人選に対して、JR東海の利害関係者と見られる人物を委員から外すよう求めた。今回の“文書騒動”で、県は塩坂氏に「場外乱闘」の旗振り役を任せているのがはっきりとした。県の専門家会議に県の利害関係者が含まれていいのか。

国は県からの文書について、何ら対応することはないと回答した。多分、県が仕掛けた「場外乱闘」に巻き込まれるのを避けたいのだろう。

川勝平太知事は県職員らを前に、事あるごとに「心は素直にうそ・偽りを言わない」「節義を重んじ、礼節を失わない」「恥を知り、約束を違えない」など、ふじのくに公務員心得8カ条を唱えてきた。昨年11月には三重県知事に向かって「うそつき」と批判したこともある。では、県が国に送付した今回の意見書にうそ、偽りはないのか。

川勝知事はこうした疑問に真正面から回答する必要がある。

小林 一哉 ジャーナリスト

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こばやし・かずや / Kazuya Kobayashi

1954年静岡県生まれ。78年早稲田大学政治経済学部卒業後、静岡新聞社入社。2008年退社し独立。著書に『知事失格 リニアを遅らせた川勝平太「命の水」の嘘』(飛鳥新社)等。

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