日本のアパレルがここまで窮している根本要因 破滅の瀬戸際から脱する鍵はオンライン連携だ

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(2)は大ロット一括調達で価格は抑えながら、販売と在庫のSKU(色・サイズ)ギャップを小ロット短サイクル生産で補正していく方法で、2000サイズから選べて翌日には届くユニクロの擬似パターンオーダーサービス「ジャストサイズ」はミニマム在庫を倉庫に積んで短サイクルで誤差を補正生産している。

これにはVMI(Vendor Managed Inventory)というもうひとつの方法がある。販売期間を定めてSKU構成を陳列棚割に組み、欠品しないよう倉庫在庫と補充生産による補給をベンダーに委任する協業契約だ。POSデータをオンライン共有するかEOS(電子発注システム)で自動発注するかはともかく、CAD/CAMによる短サイクル高速生産が求められる。

(3)はECサイトやショールームで採寸・受注し、既製品の修理加工に負けない短期間で生産して顧客に届けるC2M(Customer to Manufactory)な受注販売方式で、採寸データを生産仕様にCAD変換してCAMで高速生産するデジタル・スキルが要となる。

アパレル再生の鍵はオンライン連携とCAD/CAM生産

いずれにせよ企画~生産~販売のロスタイムを圧縮するほど需給ギャップが小さくなって値引きと売れ残りのロスも圧縮されるが、その要は「オンライン連携」と「CAD/CAM生産」のDX(Digital Transformation)に他ならない。

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古典的SPAのように利益もリスクも1人で抱え込んでは企画~生産~販売のプロセスが分断されてオン・デマンドな対応が出来ずロスが肥大するから、企画~生産~販売をオンライン連携して分断を回避しレスポンスを最速化するのが望ましく、生産の高速化にはCAD/CAMが不可欠だ。

DXは夢物語でも難しいことでもない。スマホのように誰でも使える日常的スキルであり、アナログな手順をきちんと交通整理してデジタル化すれば即、成果が出せる。

一方通行の夢を追って破滅の瀬戸際まで追い込まれたアパレル業界だが、企画~生産~販売をオンライン連携してマーケットにオン・デマンドに向き合えばロスとコストの課題も解決し、再生の道は容易に開けるはずだ。

小島 健輔 小島ファッションマーケティング 代表取締役
こじま けんすけ / Kensuke Kojima

慶應義塾大学卒。大手婦人服専門店チェーンに勤務した後、(株)小島ファッションマーケティングを設立。ファッションビジネスの経営実務研究会「SPAC」を主催して業界の経営革新にあたる一方、業界紙誌やネットメディアにも寄稿。2016年には経済産業省のアパレル・サプライチェーン研究会委員も務めた。マーケティング&リテイリングからサプライチェーン&ロジスティクスをデジタルとアナログの両面から一貫して捉え、中長期視点の経営戦略と現場の技術革新を提言している。

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