日本のアパレルがここまで窮している根本要因 破滅の瀬戸際から脱する鍵はオンライン連携だ

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新型コロナ禍で救世主となったECにしても、人気のファッションモールの手数料は百貨店の手数料と大差なく、販売人件費負担が格段に低い(店舗販売のほぼ10分の1)ことを差し引いても、駅ビルやSCの流通コストに近い。D2C(ネット直販)アパレルが注目されているが、ファッションモール出店では駅ビルやSCとコストが違わず、自社運営ECを確立しない限り流通コストを抑えてお値打ち価格にすることは難しい。

流通コストを抑えるには、コストの低い販路(立地やサイト)にシフトする一方で顧客利便を高め、販売効率/在庫効率/物流効率が最適化する仕組みを確立してプラットフォーム化し、有力な異チャネルプラットフォーマーと相互乗り入れするのがベストで、デジタル&ローカルなOMO(Online Merges with Offline)体制が問われる。

値引きと売れ残りのロスを圧縮する3つの策

アパレル製品の調達コストはロットを拡大し工場の閑散期に入れるほど下がるが、販売までのリードタイムが長くなって需給ギャップが大きくなるリスクを否めない。 

小ロット短サイクルで投入する小規模なファストファッションだと値引きと売れ残りのロスは知れているが、シーズンの半年前後も前に発注して大ロット一括調達する大手SPA(大規模なファストファッションも含む)やコレクション発注のセレクトショップは需給ギャップが大きく「正価」販売率が低くなり、値引きと売れ残りのロスが利幅を食い潰しかねない。

ユニクロやワークマンのような定番商品なら持ち越せば良いが、ファストファッションやデザイン性の強いセレクトショップなどはシーズン中に処分するしかなく、値引きロスが利幅を食い潰してしまう。

値引きと売れ残りのロスを抑制するには以下の3つの方法がある。

(1)小ロット短サイクル投入でリードタイムを短縮し需給ギャップを最小化する
(2) 大ロット一括調達しても期中の短サイクル補正生産で需給ギャップを埋める
(3)受注先行の高速生産で在庫を持たない

(1)は小規模なファストファッションの古典的な方法で、韓国の東大門市場で流通素材を購入しビル内縫製工場で一晩で製品化して持ち帰る「キャリーSPA」など週サイクルの消化回転が可能だし、ODM(企画提案型受託生産)業者の持ち込む企画を小ロット短サイクルに仕入れるバイイングSPAだと数十店舗を2週サイクルで回すこともできる。

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