大井川「合格駅」、JRが見習うべき地域連携の姿 地元住民の熱い運動に、鉄道会社が応えた
蒸気機関車(SL)「きかんしゃトーマス号」で人気の高い大井川鉄道(静岡県)沿線に、新たな見どころが11月12日に登場した。「合格」駅。この駅名は、受験生ならば絶対に見逃せない。
ご利益たっぷりの駅名の誕生は、大井川流域の住民たちの後押しが決め手となった。
「五和(ごか)」駅が「合格」駅に
東海道線金谷駅から普通電車に乗り込み、5分でSLの出発駅、新金谷に到着する。SLを楽しむ旅行客はここで乗り換える。そのまま普通電車で代官町、日切(ひぎり)の両駅を通過、次が合格駅。所要時間10分の短い旅である。無人駅の合格駅ホームに降り立ち、踏切遮断機のある道路に出て見ると、駅舎はまるで神社の赤鳥居のよう。「受験ご利益の合格駅」と記された木製額がひと際目立つ。
両手を合わせてから、駅舎の中に入ると、柔和なお顔の合格地蔵尊が迎えてくれた。駅員たちが仕事をしていた券売所スペースに、駅舎内では全国で唯一とされる地蔵尊が鎮座する。ちゃんとおさい銭箱もあった。小銭を投げ入れてから、手をしっかりと合わせると、なんだか大願成就がかなえられる気持ちにさせられた。
合格駅は、もともとは周辺地域の呼び名から五和(ごか)駅と名付けられていた。地元自治会、団体の有志らが「チームおもしろ五和駅」を結成、駅周辺の地域振興を図る「駅起こし」を始めた。同チームは駅全体を花いっぱいに飾るなどさまざまな取り組みを行い、2014年に、五和(ごか)をもじって勝手に合格駅と名付けてしまう。その2年後には大井川鉄道の許可を得て、いまの赤鳥居の駅舎、手づくり看板「合格駅」を設置した。それ以来、地域の人たちの皆が合格駅と呼びようになり、事実上、定着した。
同チームにご利益いっぱいの「駅起こし」はそれだけではない。駅舎裏に行くと、「湯川石」と「朝永石」が鎮座する。1949年、日本初のノーベル物理学賞に輝いた湯川秀樹氏、1965年、ノーベル物理学賞受賞の朝永振一郎氏にちなんでいる。湯川、朝永両氏は太平洋戦争末期、旧海軍島田実験所で「電磁波(レーザー)」新兵器の開発に取り組んでいたから、この地域に何度も足を運んだ。
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