さらば広告マン、目覚めよ社内マーケター! ビッグデータで高まる「組織横断マーケティング」の重要性

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日本企業もこのブランドマネジャー制は浸透しているものの、後者の「ブランド横断マーケター」はほとんど聞いたことがない。役割すら存在しないことさえままある状況だ。なぜならば日本では一般的に、マーケターも職種横断のジェネラリストの人事ローテーションの中にいるため、専門性を保ったうえで幅広い経験を重ねる環境がないのが実態だからだ。

しかし、データドリブン時代に重要なのは、この「ブランド横断マーケター」である。データマーケティングにおいては、ブランドごとに分析したり打ち手を個別展開するのは、うまいやり方ではない。特に人口が減少する日本市場においては、ライフタイムバリュー(1人当たりの顧客から得られる利益)を上げることや、クロスセル(関連商品・サービスを合わせて売ること)を促進することが求められる。それには個別の商品単位で見るのではなく、顧客単位でデータを見ていくことが重要だ。

たとえば「A洗剤が30代主婦に10万ケース売れた」という情報よりも、「30代主婦はA洗剤と一緒に除菌シートも一緒に買う人が30%を超える」といった“人”単位の情報に価値が生まれる。それにより「A洗剤とB除菌シートのセットキャンペーンをしよう」など新しい展開や発想が生まれるからだ。主力ブランドからすると、「なぜ、われわれのデータを弱小ブランドのために使うんだ」と不満もでるかもしれない。そうしたタコツボの縦割り発想を打ち破るために必要なのが、「ブランド横断マーケター」なのである。

こうしたブランド横断の取り組みの重要性が認識され、プロフェッショナルを育成する動きも出てきている。米国の広告主協会(ANA)では、マーケティングを体系的に学ぶ講座を設置。「アート&サイエンスによるブランド構築」「広告会社の最適な活用法」など、内容はかなり実践的だ。学問的知識よりは実践に基づくトライ&エラーが重要なマーケティングの世界では、こうした企業発の教育プログラムはより活性化していくだろう。

もちろんブランドマネジャーも、マーケティングのスペシャリストでなければならない。売り上げ利益責任を持つブランドマネジャーには、マーケティング投資の権限(つまりおカネを持っている)があるので、ここがマーケティングに疎いのでは困る。ただ日本企業がグローバル企業との差を詰めようとするなら、スペシャリスト養成を、すべての事業部に貢献する「ブランド横断」の立場で設けることを優先することが、最も重要になるだろう。

次回は日本企業におけるCMOについて書いてみたいと思う。

著者の近著『広告ビジネス次の10年』も必読!
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広告ビジネスを取り巻く環境が劇的な変化を見せるなか、広告ビジネスのパラダイムシフトが起こっています。データを使ったマーケティングが主流になり「代理業」としての広告代理店の存在意義が希薄になりつつある現状を、デジタルマーケティングの黎明期から携わり続けた著者2名が海外トレンドも参考にしつつ、広告ビジネスの未来について示します。

 

横山 隆治 デジタルインテリジェンス代表

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よこやま りゅうじ

デジタルインテリジェンス代表取締役 1996年にDAC設立に参画。以来、ネット広告の普及・体系化・理論化に貢献。著書に『トリプルメディアマーケティング』(インプレスジャパン)、『広告ビジネス次の10年』(翔泳社)など。

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