日産「新型ノート」は国内販売の救世主となるか 「ヤリス」「フィット」など競合車とガチンコ勝負

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また、プラットホーム(車台)はアライアンスを組む仏ルノーと共同開発したものを新たに採用することで、開発費や部品調達コストの削減につなげたという。車両価格は203万円からで、平均で月間8000台の販売目標を掲げる。

日産は2010年代、カルロス・ゴーン元会長の指揮下で、成長市場の新興国での販売シェア拡大を経営の最重要点に位置づけた。投資では新興国での生産能力増強を優先し、新車の開発投資は逆に絞った。その結果、新型車の投入が極端に減って車齢の古いモデルばかりになり、近年の深刻な販売不振につながった経緯がある。

国内市場はとくにそれが顕著で、フルモデルチェンジが軽自動車も含めて1車種もない年すらあったほど。当然のごとく販売台数は右肩下がりで、2013年度の72万台から2019年度には53万台に減少した。日産の国内販売シェアは今や10.6%(2019年度実績)にまで下がっており、おひざ元の国内市場で日産の存在感は年々薄れているのが実情だ。

販売現場からは不安の声も

こうした現状への反省から、同社は経営再建に向け、今後は新型車を積極投入して販売をテコ入れする計画を打ち出している。今回の新型ノートは、6月に発売した新型コンパクトSUV(スポーツ用多目的車)「キックス」と併せ、国内における日産復権のカギを握るモデルともいえる。

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ただ販売現場からは不安の声も聞こえてくる。ある首都圏の日産系販売会社の役員は「新型ノートは価格の安いガソリン車の設定がないので、販売動向が読めない」と打ち明ける。ヤリスやフィットは50万~60万円ほど安いガソリン車を設定しており、売れ行きで差が生じる可能性もある。

日産の星野朝子副社長は11月24日に開かれた発表会で、「電動化と自動運転の先進技術を搭載したこの新型ノートで市場を牽引し、再建計画を着実に進めたい」と語った。8年ぶりのモデルチェンジは国内販売回復の起爆剤となるか。日産の経営再建の行方を占う意味でも、新型ノートの成否は大きな意味を持つ。

横山 隼也 東洋経済 記者

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よこやま じゅんや / Junya Yokoyama

報道部で、トヨタ自動車やホンダなど自動車業界を担当。地方紙などを経て、2020年9月に東洋経済新報社入社。好きなものは、サッカー、サウナ、ビール(大手もクラフトも)。1991年生まれ。

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