歌舞伎町No.1ホストが叩きこまれた接客の流儀 かつての不夜城は粋なお客に支えられていた
そう言うとお客様はホストの言いなりの可哀想な搾取される女性たちのように聞こえるが、ほとんどの場合は逆だった。表向きはホストがカッコつけて女性を手玉に取っているように見えるが、その実、ただお客様に手の上で転がされているだけだったように思う。お店で見栄を張らせて貰っているだけだった。
今思うと、漢たちはみな、子どもだった。お客様の女性たちは粋でカッコいい女性ばかりだった。私は正直、先輩たちのお客様たちのおかげで新人時代を乗り切れたのだと思う。入店した日に初めて着かせてもらった席では緊張して何も話せなかった。お客様は私を品定めするように一瞥(いちべつ)して、ほかのホストたちと談笑していた。
黒髪が光る切れ長の大きな目をした1980年代のアイドルを大人にしたような雰囲気の女性だった。色白で一見か弱そうなのに、所作や態度は豪快な姐さんという感じ。タバコの煙を大きく吐く人だった。帰り際に「入店祝いね」と言ってサッと1万円札を渡してくれた。私のことなんて見えていないと思っていたので驚いた。
ホストクラブにやってくるお客様たち
お客様に職業を聞いてはいけない、ということを最初に教わった。性風俗で働いている人が多いから、風呂場に関わるような話、働いている夜の時間に放送しているテレビの話、さらにプライベートの話は基本的にしてはいけないと。じゃあ何を話せばいいのだろうか? と思ったが、目の前のライターについて話し始めればいいんだよ。と教わった。
当時、「フードル」と呼ばれるファッションヘルスで働いているアイドルのような美貌の人たちが風俗誌の表紙を飾っていた。ある風俗嬢を予約するために予約開始時間に電話が殺到しすぎて回線がパンクしたという話も聞いた。
職業を聞いてはいけないと言われていたので、最初の頃は誰がどんな仕事をしているのか? なんて想像もつかなかったし、先輩にも特に聞かなかった。だから毎日美人のお姐さん方とお話をするというのは非常に楽しかった。だんだんと慣れてきてお客様の仕事がわかるようになってから風俗で働いている人が多くて驚いた。
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