安倍前首相、「桜」疑惑はなぜいま再燃したのか 遠のく院政、突然の地検捜査に「官邸陰謀説」
菅首相の政権運営は、自民党の二階俊博幹事長との緊密な連携による「菅・二階連合」が中軸となっている。このため、安倍前政権の中核だった麻生太郎副総理兼財務相の存在感が薄れ、総裁派閥で権勢をほしいままにしてきた党内最大勢力の細田派も、菅・二階連合の後塵を拝する形だ。
二階氏は党内を完全に掌握することで菅首相を支える一方、人事や資金を独占していることへの党内の不満も高まっており、そうした状況が安倍氏の再々登板を後押しする動きの背景にあるとされる。安倍氏側は「菅政権が安倍政治の継承を旗印に高い支持率を得られたのは、安倍氏の協力があったから」(周辺)と強調し、「安倍氏が体調を回復すれば1年間だけ菅氏でつないで、また安倍政権に戻せばいい」(同)と主張する。
疑惑再燃も安倍氏封じ込めが狙いか
11月に入り、菅首相は安倍氏が退任直前の9月に「首相の談話」という遺言のような形で提起したミサイル防衛政策の見直しについて、安倍氏が目標とした年末までの結論を先送りした。さらに、憲法改正についても、「菅首相はやってるふりをしているだけで、安倍氏のように(改憲で)リーダーシップを発揮する気はない」(自民幹部)とみる向きが多い。
そこで、安倍氏側は「話が違う」(側近)との不満から安倍氏復活に動き、それを官邸サイドが牽制するという「菅vs安倍」という構図が浮かび上がるわけだ。今回の桜疑惑再燃も「菅首相が安倍氏の封じ込めを狙ったもの」とのうがった見方が出る所以だ。
地検が刑事事件として立件するような事態になれば、細田派と麻生派、さらには竹下派など、菅首相の政権運営に不満を持つ勢力が一斉に「反菅」に転じる可能性もありうる。
ひと昔前、ロッキード事件で田中角栄元首相を逮捕させた三木武夫首相(当時)に対し、最大勢力だった田中派を先頭に多数の派閥が挙党体制確立協議会(挙党協)を結成して「三木おろし」に動いた前例もある。多勢に無勢で手足を縛られた三木首相が解散もできずに任期満了選挙に追い込まれ、自民敗北で退陣した歴史は「今回の動きと二重写しになる」(自民長老)との見方もある。
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