佐々木隆之 西日本旅客鉄道(JR西日本)社長--当社と世の中の倫理観に大きなギャップがあった
たとえば、現在、井手は経営から完全に離れているわけですから、本当に井手個人の問題であるならば、モノが言えない雰囲気というのは彼が組織を去った途端に解消されてしかるべきですが、そうなっていない。したがって、組織全体、とりわけ歴代の経営者、その中には私も入りますけれども、そういう人間の責任であると思っております。だから、その分だけ複雑だと思います。
正解は複数個あって当たり前です。それをみんなで議論して最終的に私が決める、それで私が責任をとる、そういうやり方がいちばん健全だと思います。一人の人間が決めて全体が動いていくというのは、どうも不安定な感じがいたします。
「考動」という言葉、これは山崎がつくった言葉ですが、まずは上司の言ったことを鵜呑みにしないで自分で考える、あるいは世間の皆様の当社に対する期待、そういうものを敏感に感じ取って考える。同時に部下の考え方を受け入れる上司の対応が大事。上司のビヘイビア、部下のビヘイビア、両方に手をつけないとこの問題は片付かないと思います。
--巨大組織の場合は、社員一人ひとりが自由に発言するような機会を与えると、逆に組織としてのコントロールが乱れてしまいます。安全ということを考える場合には、いわゆる上意下達のほうがいいのでは。
鉄道事業の特性として、上意下達は不可欠。特に運転などは一斉にみんなが動いて初めて可能になるわけです。しかし、それ以外のたとえばマーケットをどう見るかとか、リスクをどう判断するかというのは上から指示をするのではなく、あらゆる角度から考えていくもの。
もう一つは、企業活動のほぼすべてを現場で行っていること。接客は駅とか車掌、運転は運転士がやっています。運行にかかわる線路や車両、電車の架線も現場の人間が保守をしているわけです。