記憶力選手権で優勝した人が語る「記憶」の本質 脳力のすべての土台は「記憶力」にある?
そのため、記憶力に注目をし、記憶力を鍛えることによって、他の認知能力によい波及効果が期待できるのです。しかも記憶力は向上したかどうかわかりやすいという利点があります。
覚えられたという感覚は他の能力に比べて実感しやすいからです。こういった理由で、総合的に頭を良くしたかったら、まず記憶力を良くすることに注力することが合理的な方法なのです。
アイデアの基は記憶
何か素晴らしいアイデアが生まれる過程を考えてみることにしましょう。アイデアというものは思いもかけない場所やタイミングでひらめくことが往々にしてあります。うーん、うーんと唸りながら頭を絞って出てくるものではないことは今までの経験から理解されている人も多いはず。ふとした拍子にマンガやイラストで出てくるようなあの電球がピカッ! と光るような感覚を味わった経験がある方も多いでしょう。
自分にとって素晴らしいアイデアが閃く状況がそのような感じですから、アイデアを生み出すための法則的なものなど存在しないようにも思えます。しかし、アイデアが生まれる過程をつぶさに観察してみると、そこにはある共通項が存在しているのがわかります。
さまざまな知見から、アイデアはまったく何もないところからいきなり生まれるものではないことは、今ではほとんど自明の理ともなっています。
アイデア創出、知的発想法の名著『アイデアのつくり方』の著者であるジェームス・W・ヤングもかつて著書のなかで「アイデアとは既存の要素の新しい組み合わせ以外の何ものでもない」と看破しています。その考え方が知的発想の方法として普遍性を持っているからこそ同書は何十年にもわたってロングセラーになっているのでしょう。
私もこの考え方に賛成です。別々の状況やタイミングで頭のなかに入ってきたバラバラの情報どうしがあるとき何らかの化学反応を起こして、その結果新しい価値を持つ情報を生み出すという事実は、私自身も実際に何度も経験し実感しているからです。
これは私が関わってきた記憶競技で使うテクニックが、結果的に脳内でアイデアが生まれる過程をなぞっているようなところがあるためです。
私が携わってきた「記憶競技」。この競技はランダムに並んだ数字や単語やトランプの並びなどを制限時間内でできるだけたくさん記憶するという競技です。
そのようなものをたくさん覚えるためのコツはひとつひとつ個別に覚えないということです。効率よくたくさんの情報を覚えるためには、それぞれを関連付けて情報を圧縮して覚えることが重要になってきます。関連付けしておくことによって思い出すとき、紐付けられた相手の情報たちを苦労せずに引っ張り出すことができるというわけです。
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