東京-大阪「運賃6万円も」トラック運転手の苦悩 上昇傾向にあったのに「コロナでパーになった」

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2020年4月に政府による緊急事態宣言が発令されて以降、日本経済はしばらく休眠状態が続いた。工場は操業を停止し、テレワークに切り替えたオフィスは閉鎖。飲食店をはじめとする店舗も営業自粛に踏み切った。

これを受けて、生活物資である食料品や日用雑貨向けを除き、トラック輸送の荷動きは壊滅的な状況に陥ってしまった。出荷拠点である物流センターの庫内は動かない製品の在庫で溢れかえった。

アパレル製品の店舗向け供給センターを運営する大手物流会社のある支店長は、「店舗の営業自粛が始まった4月以降、春物の製品がまったく動かなくなった。春物の在庫が積み上がっているところに、生産活動を再開した中国から夏物の製品が届き、とうとうセンター内に余剰スペースがなくなってしまった。仕方なく近隣で倉庫を探すことにしたが、それはお客さんにとって追加コストの発生を意味する。

一方で、当社は荷物が動かなければ、出荷作業料や配送料が発生しないため、売り上げがほぼゼロになる。いったいこの先どうなってしまうのか、見当もつかない」と危機感を募らせる。

「トラック余り」が進み、赤字覚悟で引き受ける

ここ数年、トラック輸送のマーケットはドライバー不足などを背景に、売り手に有利な環境が続いていた。ところが、今回のコロナ・ショックを機に状況は一変した。工場、物流センター、店舗・オフィスを行き来する、いわゆる企業間取引のB2Bの領域では、需要の急減で「トラック余り」の現象が起き始めている。

トラックの配車マッチングサービスを展開する、ある物流会社の担当者によれば、生活必需品以外の荷物の輸送需要は激減しており、市場に出回る限られた求車情報に対し、車両を持て余している運送会社が採算度外視の運賃で入札してくるケースが相次いでいるという。

運賃が投げ売りされている実態はドライバーたちも把握している。東京、大阪間で大型車を運行する、あるドライバーは打ち明ける。

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「配車係から、先日は東京、大阪間の大型トラックでの輸送を運賃6万円で引き受けた、と聞いた。売り上げがゼロになるよりはましだ、という判断のようだ。同区間の輸送がそんなに安い運賃になったことは今までなかったと記憶している。それだけ日本全体で輸送の仕事が減っているのだろう」

運賃市況の悪化はトラック運送会社の収益減に直結し、ひいてはドライバーが受け取る報酬に負の影響を及ぼす可能性も否定できない。先行きへの不安は隠せない。

「ここ数年、トラック運賃は上昇傾向にあったのに、コロナでパーになってしまった。感染拡大が止まれば、荷量は徐々に増えていくかもしれないが、コロナ前の水準にまで戻るとは考えにくい。運賃競争が激しくなれば、当然、今後は我々の収入が減っていくことも覚悟しなければならない。実態を知らない人からは、コロナで失職する人が増えるなか、『あなたたちは仕事があっていいね』って言われるが……」

刈屋 大輔 物流ジャーナリスト、青山ロジスティクス総合研究所代表

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かりや だいすけ / Daisuke Kariya

1973年生まれ。青山学院大学大学院経営学研究科博士前期課程修了。経営学修士号(MBA)。物流専門紙『輸送経済』記者、『月刊ロジスティクス・ビジネス(LOGI‐BIZ)』副編集長などを経て現職。一般社団法人フラワーリボン協会常務理事。

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