わが子と「14年ぶりに再会」した53歳男性の思い 浮気が理由で離婚後、会うことができなかった

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緊張の中、健司さんは約束の時間の5分前に到着して息子と娘を待っていると、「お父さん?」と女性の声が聞こえてきました。振り向くと、22歳になった長女と、連絡をくれた20歳の息子が並んでいました。

健司さんは会社経営をしているので、ネット検索をすると顔写真が出てきます。子どもたちは幼いころの記憶を頼りに、父親のことを調べていたようで、すぐに「お父さんだ」と気がついたそうです。

「息子から突然連絡がきて、『あなたの息子』と言われたときにはものすごく涙が流れました。実際に待ち合わせしたときに、「お父さん」と呼ばれたときには、本当は泣き崩れるほどうれしかったです。なにしろ、毎日毎日ずっと2人の写真を持ち歩いていましたし、とにかく会いたい、元気に成長しているのだろうか、つねに頭に浮かんでは会いたい気持ちをずっと抑えてきた14年間でしたからね。

健太から連絡がきて、再会の日程を決めるときも、子どもたちのスケジュールを優先で約束したので、正直、すごく大事な仕事がいくつか入っていましたが、全部キャンセルしましたね(苦笑)」と健司さん。

この14年間どうだったのか、尽きない会話

久々の再会は、若い2人を考慮して、高級焼肉屋さんへ連れて行きました。しかし、「たくさん食べなさい」と健司さんが促しても、2人とも緊張と胸がいっぱいになっていたのか、全然食事が喉を通らず、たくさんごちそうしてあげたかったのにあまり食べられなかったとか。

この14年間どんな生活をしてきたのか、学校生活はどうだったのか、お友達はたくさんいるのか、娘の就職はどうだったのか、子どもたちが幼いころの思い出話など、尽きることのない会話で、少しずつ空白の時間の中のピースを埋めるように、健司さんは子どもたちが話す言葉を一言一言大切に拾い集めるように、夢のようなこの目の前の状況をかみしめていたといいます。

会話も弾んできたところで、健太さんが思いの丈をぶつけるように、健司さんの目をまっすぐ見て声を振り絞って言った言葉が、「お父さん、どうして今まで僕たちに会ってくれなかったんですか」。

これには健司さんも絶句してしまいました。

会いたかった。ずっと会いたかった。ただ、別れた妻から面会が許されなかった。自分ができることは、毎月欠かさず養育費を送ることだけだった……。

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