マハティールがフランスを猛烈に批判した意図 世界で高まる「イスラム恐怖症」への牽制か
実際、マハティール前首相は92歳で再び首相の座に返り咲いた後、イスラム教国家としての発言力を世界で高めようと尽力し、昨年12月には首都クアラルンプールでクアラルンプール・サミット(イスラム諸国首脳会合)を開催。イスラム世界が直面する課題を話し合うことを目的に、マハティール氏が主催したこの会議には、イラン、カタール、トルコなどイスラム諸国の要人ら数百人が出席した(マハティール前首相は今年2月に辞任している)。
この会議でマハティール氏は、世界中で“イスラムフォビア”、つまりイスラム教への偏見や不当な扱いが蔓延していると指摘、この流れに立ち向かうための結束を訴え、「西側諸国への依存を断ち切る方法を見出すべきだ」と宣言した。アメリカなどからの経済制裁を受けているイランに協調する姿勢を見せることで、欧米に頼らないイスラム世界独自の経済的自立を訴えた形だ。
イスラム教徒向けのデジタル通貨構想を提案
さらに、イランのハッサン・ロウハニ大統領が、「イスラム世界は米ドルが支配する金融体制から脱却するための措置を講じるべきだ」と述べ、イスラム教徒向けの共通暗号通貨(デジタル通貨)構想を提案。これは、貿易決済における米ドル依存を低下させてイスラム金融の利用を促進させる狙いで、マハティール氏がかねて提案してきていたものであった。
会合では、ブロックチェーン技術の活用などにより米ドルではなく現地通貨を利用した貿易を促進し、イスラム諸国が連携することで、欧米中心の貿易・経済体制からの脱却と自立が強調された。マハティール前首相は、会議に先立って行われたイランのロウハニ大統領との会談で、「マレーシアはアメリカの圧力に対するイランの政府と国民の抵抗を賞賛する。両国はイスラム国家として、経済的な能力を活かすことで大規模な発展を遂げることができる」と協調姿勢を全面的に押し出していた。
センセーショナルに発言の一部が取り沙汰された今回の騒動。歯に衣着せぬ欧米批判を続け、イスラム教徒を抱える国々の間で強力なリーダーシップを発揮してきたマハティール氏の今回のツイッター発言の裏には、世界で高まり続けるイスラムフォビア(イスラム恐怖症)の流れを抑止させたい思いが隠されている。
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