マハティールがフランスを猛烈に批判した意図 世界で高まる「イスラム恐怖症」への牽制か

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ちなみに、マハティール前首相は、この自身の発言が前後の文脈などを省いて不正確に伝えられ、世界中に誤解が広まることとなったとして、「実にうんざりだ」と、再びツイッター上に連投して抗議をしている。その中で、「FacebookやTwitterの決断で投稿が削除されることに関して、私は為す術もない。彼らは表現の自由の御用達業者であるのであれば、私にその発言の意図を説明することを許さなければならない」と、FacebookやTwitter側への反感も露わにした。

マハティール氏のこの発言の背景には、実は欧米諸国への強烈な対抗意識が垣間見える。元は開業医であったがのちに政治家へと転じたマハティール氏は、欧米諸国に対抗しうるアジアにおける存在力を高めるべく、日本の経済成長を見習うべきだとするルックイースト政策を掲げて強力なリーダーシップを発揮した。マレーシアの国力を飛躍的に増大させた経緯から、今でも国民の絶大な信頼を誇る。

とりわけ、「アジアの価値」を重視して日本だけでなく中国などの大国を取り込むことで、西側中心の経済秩序や価値観に立ち向かう姿勢を明確にし、イスラム系だけでなく華人、インド系など多宗教多民族が融合する国家マレーシアへの内政干渉を抑える目的もあったとされている。

「西側諸国」に対する不満

現に、話題となったツイートは実は12項目にも及ぶ内容のほんの1項目の内容であったが、その他の項目でマハティール氏はしきりに「West(西側諸国)」というフレーズを用いてこのように述べている。「われわれは西側諸国のやり方をしばしばコピーしがちだ。彼らのような服装をして、彼らの政治システムだけでなく、彼らの奇妙な習慣でさえ取り入れる。しかし、われわれは多様な宗教や人種の間で異なる、われわれ自身の価値観を持ち、それこそがわれわれが維持すべき必要があるものなのだ」。

さらには、ヨーロッパでは昨今、ネーキッドビーチ(全裸ビーチ)までもが存在すると指摘したうえで「西側諸国はこれをノーマルとして受け入れているが、これを他者に強制的に課すべきではない。そうすることは、人々の自由を奪うことにつながるのだ。他者の価値観に敬意を払わないことは許されない。尊敬を示すことこそが、彼ら自身の文明レベルを測ることにつながるのだ」と熱弁を振るっているのだ。

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