マハティールがフランスを猛烈に批判した意図 世界で高まる「イスラム恐怖症」への牽制か
これらのテロ事件は欧州で起きたものの、マクロン氏のムハンマド風刺画を擁護した発言などを発端として、イスラム教を国教とする国家などでは「表現の自由は許されても、冒涜は許されない」などと一斉に反発が起き、フランス製品のボイコット運動などが起きている。これはアラブ諸国だけの話ではない。国民の約6割以上をイスラム教徒が占める東南アジアのマレーシアにも余波は及んでいる。
95歳となる高齢のマハティール前首相は10月29日、ツイッターへの連続投稿で、「フランス人は、その歴史の中で大勢の人を殺してきた。多くはイスラム教徒だった。このような過去の大量虐殺ゆえ、イスラム教徒には多数のフランスの人々に対して憤り、彼らを殺害する権利がある」と訴えた。
そのうえで、「イスラム教徒は『目には目を』の報復律を実践してこなかった、フランス人もするべきではない。フランスは国民に他者の感情を尊重するよう教育する必要がある。フランス人は1人の怒れる人物の行為をすべてのイスラム教徒とイスラム教自体の責任にしている。ゆえにイスラム教徒にはフランス人を罰する権利がある」と主張した。
マハティール発言、一部は削除
このツイートは瞬く間に世界中で波紋を呼ぶ結果となり、フランス側の猛烈な反発もあって「殺害する権利」に言及した部分が後にツイッターから削除された。しかし、同じ内容はマハティール氏自身のブログでも公開されており、該当部分は今でも削除されず残されたままだ。
これについて、当のマレーシアのイスラム教徒はどう受け止めているのだろうか。首都クアラルンプールの金融機関に勤めるニザさん(30)は、苛立ちを示しながら、こう話した。
「確かに、フランスのマクロン大統領が表現の自由を掲げてムハンマドの風刺画を許容する姿勢を示したことには、大きな違和感がありました。表現の自由と他宗教への敬意は別次元の話です。ムハンマドを冒涜するようなことがイスラム教徒にとってどれほどの意味があるのか、そこに想像力を働かせることは大国のリーダーとして必要なことだと思います。穏健なイスラム教徒たちでさえ、疑問を抱いているのが事実です」
だが、マハティール氏のツイッターに話が及ぶと、小さくため息をついて、「マハティール氏がツイッターで述べたことは少し行きすぎですね。マレーシア国民としては恥ずかしい。負の連鎖を呼ぶような発言は控えてほしい」と述べ、あくまで冷静な姿勢を見せた。
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