菅政権で加速?「地銀再編」が意外に難しい理由 金融庁長官は地銀トップと早朝からウェブ会議
地銀再編がテーマになる背景には、厳しい収益環境がある。上場する地銀78行・グループの2020年4~6月決算は、連結最終損益が全体の6割にあたる48行で前年同期に比べて減益または赤字になっている。超低金利が継続し預貸業務で収益を出しにくい環境が続いているためで、さらに新型コロナウイルス感染拡大に伴い、与信費用もじわじわと上昇に転じつつある。
全国地方銀行協会の大矢恭好会長(横浜銀行頭取)は9月16日の記者会見で次のように述べた。
「コロナで情勢は変わったと思うが、企業サイドも資金余剰になってきており、あまり日本の中での資金需要が見込めなくなってきているというのが、ここ何十年かの趨勢ではないか」
「横浜銀行の場合は7割くらいが資金利益で稼いでいて、フィービジネスの割合はまだまだ低い。マーケット金利がどんどん低下し、ストックの貸し出し利回りも高いものからどんどん入れ替わっていく」
依然として地銀の収益の大宗は伝統的な預貸業務に依存している構図は変わらず、このままのビジネスモデルで経営を持続することは容易ではないということであろう。
その処方箋としては、「再編が解決策ということもあると思うが、再編だけがソリューションの手段ではないとも思っている。組む相手も銀行同士ではないかもしれない」(大矢会長)と言う。
苦境にあえぐ地銀が目下期待を寄せるのは、抜本的な規制緩和による「他業禁止」の解除だ。
銀行の業務範囲はがんじがらめ
「楽天は銀行をやれるが、銀行は楽天を経営できない」
銀行の業務規制で必ず問題となるフレーズだ。銀行グループが営むことができる業務は銀行法などで制限され、業務範囲はがんじがらめになっている。その理由は他業リスクの排除、利益相反取引の防止、優越的地位の濫用の防止などだ。
だが、もはや銀行による産業支配は過去のものとなりつつあり、規制の抜本的な改正が望まれている。金融庁も金融審議会の「銀行制度ワーキング・グループ」で議論を重ねており、11月前半までに各論がまとまる見通しになっている。
そうした業務範囲規制の緩和で、地銀が本丸と位置付けているのが「不動産賃貸業務の緩和」だ。
銀行は地方都市など駅前の一等地に店舗を構える「土地持ち」「ビル持ち」であることはよく知られている。しかし、その不動産を賃貸に回すには長年厳しい要件が課され、事実上できなかった。
そこで金融庁は、2017年9月に発出した「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の改正において、「公共的な役割を有する主体からの要請」であれば柔軟な対応が可能となるよう規制緩和を行った。空き家対策や中心街の空洞化に悩む地方自治体が地方創生で地元地域金融機関に要請するニーズがあるというのが理由だ。
銀行制度ワーキング・グループの議論を経て、規制緩和がさらに進み、公共的な役割を有する主体からの要請がなくても賃貸できるようになれば、地銀は収益拡大を図れる。
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