北京ダックで有名な中国の老舗レストラン・チェーン「全聚徳(チュエンジュードゥ)」が深刻な経営不振に陥っている。
10月26日、全聚徳は2020年7~9月期の決算報告を発表。同年1月から9月までの累積売上高は5億1500万元(約80億5000万円)と前年同期比56.71%も減少し、純損失が前年同期の5.8倍の2億200万元(約31億5700万円)に膨張するという惨憺たる業績だった。その理由について同社は、新型コロナウイルスの流行によりレストランの経営が深刻な打撃を受けたためと説明した。
しかし過去3年間の決算を振り返ると、業績悪化は新型コロナの流行前から始まっていた。2017年には18億6100万元(約291億円)の売上高と1億3600万元(約21億円)の純利益を上げていたが、2018年は17億7700万元(約278億円)の売上高と7300万元(約11億4100万円)の純利益、2019年は15億6600万元(約245億円)の売上高と4500万元(約7億330万円)の純利益という具合に右肩下がりが続いた。
2020年は年初からの9カ月で過去3年分の利益の大半を食いつぶした格好だ。
1864年に北京で創業した全聚德は156年の歴史を誇る。2007年に深圳証券取引所で株式を公開し、「老舗レストランの上場第1号」「北京ダックの上場第1号」などと持てはやされた。業績が最も好調だった2012年には、19億4400万元(約304億円)の売上高と1億5200万元(約24億円)の純利益を計上していた。
中国政府認定の老舗企業の5割が赤字
実は、経営不振にあえぐ中国の老舗は全聚徳に限らない。中国商務省が老舗ブランドに与える「中華老字号」の称号の認定企業は現在1128社あるが、その5割が赤字経営であり、業績好調な老舗はわずか1割しかないとされる。ブランドにあぐらをかいて業務改革の意識が乏しく、市場の変化に機敏に対応できず、インターネットへの対応も遅れていることなどが、業績不振の老舗に共通の特徴だ。
そこに新型コロナが追い打ちをかけ、全聚德は客離れのスピードが加速してしまった。事ここに至って同社はやっと重い腰を上げ、「料理の値段が高く、サービスが悪く、コストパフォーマンスが低い」という消費者の悪評の払拭に乗り出した。具体的には「料理の値段を下げ、サービス料を廃止し、(店舗によってばらつきがあった)価格と料理法を統一する」という3つの改革を実行するという。
例えば看板メニューの北京ダックは、レストラン会員向けの値段をこれまでの258元(約4032円)から238元(約3720円)に改め、そのほかの料理も10~15%値下げした。一部の店舗で徴収していた10~15%のサービス料も全廃した。とはいえ、もともと割高だった価格を下げても客足が戻るとは限らず、正念場はこれからだ。
(財新記者:薄雪)
※原文の配信は2020年10月26日
記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
印刷ページの表示はログインが必要です。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら
無料会員登録はこちら
ログインはこちら