自重するディズニー、「値上げ効果」に託す浮上 上場来初の赤字見込みも、積極投資は断行

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キャストのオペレーションが習熟してきたことなどで、10月末には入園時間指定パスポートの入園可能時間を前倒しした。また両パークでの花火も再開。ランドでは規模を縮小しつつ、パレードも行っている。そのほかのイベントも再開していく。

一方で、コスト面では大幅な削減に踏み切る。役員報酬や賞与の減額、準社員の新規採用の凍結、キャストの再配置を実施。雇用調整助成金の受給等と合わせて人件費を通期で310億円削減。さらに、集客のためのプロモーションや広告費用の見直し、スペシャルイベント、エンターテイメントプログラムの中止・縮小などで、同190億円の費用を削減する方針だ。

大型投資の断行へ資金調達も

逆風はやむ気配すらないが、上西社長は今後も大型投資を断行する覚悟を明らかにしている。緊急性の低い更新投資は見送るものの、開発面積約14万㎡のディズニーシー大規模拡張プロジェクト(投資額2500億円、2023年度開業予定)、「トイ・ストーリー」がテーマの新ホテル(投資額315億円)などは継続すると表明。

資金調達も進めてきた。休園中の2020年5月には総額2000億円のコミットメントライン枠をみずほ銀行などと締結。9月にはディズニーシー拡張プロジェクトなど長期の設備投資に充当するため1000億円の社債を発行済みだ。上西社長は「今後資金が必要になったとしても、中長期的な資金確保の準備が整っている状況」と説明した。

コロナ到来まで、業績は好調そのものだった。2019年3月期は東京ディズニーリゾート35周年記念イベント効果で売上高は過去最高の5256億円に達した。2020年3月期も周年イベントの反動を最小限に抑えて高水準で推移していた。人気は健在どころか高まるばかりだ。今期に「美女と野獣」の新エリアが開業したことで、パークの潜在的な集客力はさらに増していると言えるだろう。

しかし、入園者数の制限がいつ、どのように緩和・解除されていくのか、見通しは立っていない。いつかやって来るフルキャパシティでの営業に向けて、多くの制限を課された中、顧客を楽しませる体験を提供し、1人当たり売上高をどこまで引き上げられるかが、当面の焦点になりそうだ。

田邉 佳介 東洋経済 記者

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たなべ けいすけ / Keisuke Tanabe

2007年入社。流通業界や株式投資雑誌の編集部、モバイル、ネット、メディア、観光・ホテル、食品担当を経て、現在は物流や音楽業界を取材。

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