「夫の連れ子」との関係に悩む37歳女性の葛藤 あるステップファミリーが模索する幸せの形

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恵子さんは続けます。

「うちの場合は夫からのフォローがないうえに、約束してた教育方針も、夫の気分でコロコロ変わってしまうので話し合いが無駄になってしまうんです。子どもに怒っているときにも、ただ『怒るな!』と私に叱るのではなく、せめて『怒ることもあるよね。でもさ~』といったん慰めてほしい。話し合いもしようとしないでただ頭ごなしに怒られると、血がつながってないのは私とペットの猫だけだな……と孤独を感じることも多いんです。そういう共感や受け入れをしてくれたらもっと精神的に楽になるし余裕ができるんですけどね」

日々その葛藤の中にありながらも娘たちを想う恵子さんは次のようにも語っていました。

「娘たちの気持ちを考えると、私たちが勝手に結婚して、勝手に母親だと紹介され、勝手に好きになれと言われたって、娘たちだってかわいそうですよね。大人の勝手な事情に振り回されてしまって」

不仲になっていた長女からの手紙

恵子さんが今いちばん幸せを感じる瞬間は、家族みんなで食べ放題の焼肉屋さんでお肉を囲んでいるときなのだそうです。家族全員笑いながら幸せな顔をして会話も弾むし、普段お互いに感じている心の溝も忘れて、みんなが笑顔でいることに幸せな気持ちになると言っていました。

そして、先日の恵子さんのお誕生日。不仲になっていた思春期の長女から手紙とプレゼントが手渡されました。

夜、部屋でひとり恵子さんが長女からの手紙を開くと、そこにはこう書かれてありました。

「恵子ちゃんへ。お誕生日おめでとう。毎日忙しい中、沢山のことを背負ってくれてありがとう。高校2年生になってからほとんど話をできなかったことが本当は寂しかったです。どんなときも逃げずに面倒みてくれてありがとう。経済的に支えてくれている恵子ちゃんみたいにはなれないと思うけど、私の帰るところはここしかないから恵子ちゃんにも頼ってほしいです。本当は恵子ちゃんは恵子ちゃんの思うような子育てがしたかったんだと思う。でもこんなんでごめんなさい。私にはこの家族しかないし、誰も失いたくないしなくしたくないから、これからも末永くよろしくね」

これには恵子さんも目を真っ赤にして涙を浮かべていました。

次女は思春期真っただ中でまだまだ気の休まることはなさそうですが、長女は現在自分でやりたいことも見つかり、自分の将来に向かって歩き出しました。

「やればできるだけの素質があるんです!」と子どもたちの未来に目を輝かせる恵子さん。

「結婚してもう4年と思うしまだ4年とも感じる。とにかく毎日が刺激的です。幸せかと聞かれたら、“幸せ”と即答はできないけれど、やっぱりここが自分の居場所だとも感じるんです。この子たちを1人前にしなければという使命感があるのだと思います。夫がどうのではなく、私は娘たちと出会うのが役割で夫と一緒になる運命だったんじゃないかと感じています」

恵子さんの親修行と、娘たちとの心の歩み寄りの葛藤はまだまだ続きそうですが、きっとその中でも大きな幸せはあるのだと感じました。

鈴木 まり 生活カウンセラー

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すずき まり / Mari Suzuki

日本女性ヘルスケア協会長、株式会社ロサ代表取締役、アーユルヴェーダサロンROSA並びにジョホレッチスタジオを運営。大学・専門学校では心理学を専攻。西洋医学、東洋医学、心理学の広い分野から、カラダ、メンタル、環境、生活全般において年間約600名の女性たちの悩みに接している生活カウンセラーでもある。著書『48手ヨガ~江戸遊女に学ぶ女性ホルモンと体力活性法』(駒草出版)。

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