「税収上振れで、今が法人税減税のチャンス」 伊藤元重・東大教授が投資サミットで強調
[東京 19日 ロイター] - 経済財政諮問会議の委員を務める伊藤元重・東京大学大学院教授は19日に開かれた「ロイター日本投資サミット」に出席し、デフレ脱却による税収増で2015年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)の赤字を半減する政府目標は達成可能なうえ、税収の上振れが期待できるため、今が法人税減税のチャンスだと強調した。
財政運営で重要なのは実質金利であるため、物価上昇率が2%に上昇した際に名目金利が2%上がることに問題はないと指摘。一方、信用リスクによる金利上昇は防ぐことが難しく、警戒すべきと指摘した。
法人税収上振れも
伊藤教授は、1)デフレ状態から物価が上昇する状態になるだけで名目の税収が増える、2)企業業績が非常によくなり、それに応じて税収が増える、3)今後数年は欠損法人の割合が減り、法人税を支払う企業が増える──の3つの理由から、法人税が増えると説明。このため「税収を減らすことなく、法人税率を下げることができる」との見方を示した。
経済財政諮問会議の中期試算では、アベノミクスが順調に機能し2015年度の基礎的財政収支の赤字半減は実現できるとしたが、税収の上振れにより「赤字は半減以上に減るかもしれない」と指摘。このため「法人税収入が相当増え、これを財源の一部に使って法人税率を下げていくことは十分考えられる」と述べ、「今こそ日本は、財政再建を実施しながら法人税減税を進めるチャンス」と強調した。
企業の税負担の国内総生産(GDP)に対する比率(法人税負担率)は、日本は主要国の中では非常に高いうえ、「景気がよくなり増えていく」と指摘。成長率の伸びに対する税収の増加分を示す弾性値を3程度と試算し、「GDPが2%増えれば法人税収は6%も増える。企業活動や海外からの投資誘致を活性化する点からは、かけ離れた状況になる」とし、法人税改革の見直しが急務と語った。
唯一の心配は信用リスク
アベノミクスの成功でデフレ脱却・物価上昇が続けば、長期金利の動向が焦点となる。伊藤教授は「財政の問題を含め重要なのは実質金利であり、物価の2%上昇に伴う金利の2%上昇は全く問題ない」との見方を示した。「景気が本格回復すると実質金利も上昇する可能性があるが、資金需要や税収も増えるため問題ない」とみている。
ただ、「唯一心配しているのは、財政リスクが顕在化することによる実質金利の上昇」と指摘。「国債の買い手が不在となる流動性リスクは、日銀が買えばいいので日本ではありえないが、財政が成り立たないとみられる信用リスクでじわじわと金利が上昇すれば誰にも防げない」と警戒した。
(竹本能文、中川泉 編集:田中志保)
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